059.あなたが残した熱は下がらないまま

「―――俺について来い」

大きな声ではないのに、何故か身体の奥深くまで届く声。
私だけに向けられた言葉じゃない―――それなのに、彼と目が合ってしまったから。
まるで、私だけに向けているような錯覚。
ドクン、と跳ねた鼓動に、心の中で自嘲する。

愛馬の腹を蹴って走り出した彼に続き、士気が高まった兵たちもまた、自分の馬を走らせる。
前の政宗様を守るのは、小十郎さんの役目。
殿を任せてくれた政宗様の期待に応えるべく、最後の一人を送り出してから虎吉の手綱を強く握る。

「行こうか、虎吉」

場の空気に少しばかり興奮した彼の首をポンと撫で、その腹を蹴った。



「姫さん、どうした?顔が赤いぞ」

熱でもあるのか?と問う氷景に、何でもないと答える。
何が原因かなんて、自分が一番よくわかっているから。

「大丈夫。心配しないで」

追及されると恥ずかしいから、とは言えず、その続きは喉の奥に飲み込んでしまう。
政宗様の声が、目が残した熱は、未だに肌の下で熱く燃え盛っていた。

「…あぁ、なるほど」

微妙な表情で頷く氷景に、これだから勘の良い人は…と考えてのも無理からぬことだと思う。

伊達 政宗 / 廻れ、

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11.06.21