057.繰り返し繰り返し、愛を囁いた

自らの感情を身体で、行動で、言葉で表現する彼女。
楽しい時には笑い、哀しい時には涙を流す。
3秒と同じ表情を見せない彼女は、言う。

「ローさんの愛が足りないと思います!」

びしっと突き付けられた人差し指。
人を指差したら云々の話をしていたのは彼女だったと記憶しているが、ここはローの自室で二人以外の人間はいないからよしと判断したのだろうか。

「…そうか?」

今回の要因が何なのかは知らないが、彼女は時折こうして感情を高ぶらせる時期がある。
猫の発情期か、と呟いた時には、腕に全治三週間の深い爪痕を彫り込まれた。

「で?どうしてほしいんだ?」

具体的に言え。
そう言うと、彼女はベッドの上でクッションを抱いた姿勢のまま、うーん、と首をひねった。
具体的に何をどうしてほしいと言う要求もないままに、思う事を口にするあたりは彼女らしいと思う。

「愛を囁く、とか?」
「………俺が、か?」
「想像できないなぁ…。そのままの方がローさんらしいや」

そう言って、うんうん、と一人納得する彼女。
無理は良くない、やら、キャラが違う、なんて呟きは聞こえなかったことにした。
いつの間にか、座っていたはずの彼女はシーツの上をコロコロと転がっている。
色気も何もない、心底安心しきった様子を見ていると、自然と頬が緩んでくる。
それを隠すようにシーツの端を持ち上げて、よっと声をかけて彼女の身体を壁側へと押しやった。

「寝るなら半分開けておけ」
「はーい」

そう言って大人しく端に寄った彼女は、眠気のままに瞼を伏せる。
その数分後には小さな寝息が聞こえてきて、相変わらずの寝つきの良さに笑いをかみ殺した。

「愛を囁く、か…」

ベッドに腰掛けて、その黒髪をさらりと撫でる。
キャラじゃないとわかっているけれど…眠る彼女に向かってそれを囁いた事はある。
それも、一度や二度じゃなく。
その理由は、囁いた時の、起きているわけでもないのに穏やかに、そして嬉しそうに笑う彼女の表情が気に入っていたから。

「その内、起きてる時にも言ってやるよ」

たぶん、彼女の方が平常心ではいられないだろうけれど。

トラファルガー・ロー / Black Cat

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11.06.15