051.あなたが握り締めた後が消えずに

「ありえない!!どんな馬鹿力!?」

ありえない、ありえない、ありえない!!
寧ろ、ありえてほしくない!!

心の底からそう叫びつつ、右の手首に添え木をして、包帯を巻いていく。
そうしてせっせと手当てする左の手首にも、恐ろしいほどの青痣。
一歩間違えば、こちらも骨折していたっておかしくない。
折れなかったことが奇跡と言える。
それもこれも、全ては目の前で淡々としている男、イルミ=ゾルディックの所為だ。

自ら死亡フラグは立てたくないので、自分の持てる全てで、ゾルディック家との関わりを避けてきた。
にも拘らず、前の仕事の時にうっかり関わってしまって…それから顔を合わせるのは二度目。
今はルビーの格好だから大丈夫、気付かれるわけがない、そう高をくくって横を通り抜けようとした、その結果がこれだ。

「そんなに力、入れてなかったんだけど…脆いね」
「あんたの家を基準にするな!こちとら普通の一般人だ!!」

左手は辛うじて堅で防いだが、痛みの度合いからして、ヒビくらいは入っているかもしれない。

「一般人?君が?」

心底不思議そうな顔で首を傾げたイルミ。

「だって、ルビーでしょ?その腕、父さんだって認めてるよ」
「………え」

ルビーの専門は殺し。
これはゾルディックと被ってしまう可能性があったから、慎重に慎重を重ねて仕事を引き受けてきた。
痕跡一つ、残していないはずなのに―――今、とてつもなく不安な言葉を聞いた気がする。

「痕跡の消し方がプロだって。こんな風に殺れる奴は多くないからって褒めてたよ」

どうやら、全力を注ぎこむ方向を見誤ったようだ。
全ての苦労が水の泡になったことを悟り、脱力する。
両手首も痛いし、何だか頭も痛くなってきた。

「…もういい。なんか、あんた達に文句言うだけ、時間が無駄な気がしてきた…」

常識では測れない世界の住人なのだ。
これっきりの関わりにするように努力すればいい。

「所で、無理やり乗せられた飛行船はどこに向かってんの?」
「俺ん家」

冗談じゃねぇよ!!
驚き過ぎて口から心臓が飛び出すかと思った。
今まさに関わらないようにしようと思った矢先にこれか!と言いたい。

「元の場所に帰してください」
「無理。母さんが会いたがってたよ」
「じゃあ勝手に降ります」

そう言って立ち上がったところで、待ちなよ、と腕を掴まれた。
…無事だった左腕から、嫌な音。

「あ、ごめん」

謝罪の意思など欠片も見つけられない声に、両手が駄目ならと足が出た自分は悪くないと思う。
一矢報いる事なんて出来るわけがなかったんだけど。

イルミ=ゾルディック / ラッキー・ガール

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11.06.07