049.手を繋いで、抱きしめて、それでも足りない

どうすればいい?なんて聞かれても、明確な答えなんて返せない。
こんな風に火傷しそうな胸の内を語られて、平常心でなんかいられないから。

「んー、と…そう言う時は、声に出したらいいと思うよ?」

頬の熱さを自覚しつつ、至近距離にいるエースにそう答えてみる。
アドバイスと言うよりは、殆ど自分の希望だ。
手を繋いで、抱きしめて…それでも足りないと思ってくれるなら、言葉が欲しい。

「声に、か…」
「うん。だから…はい、どうぞ」

そう言われたって、中々言えないのが男と言う生き物らしい。
これは、白ひげの仲間に教えてもらった事。
寡黙な男ほど背中で語るもんだ!と拳を握った彼は、大層な恥ずかしがり屋だった。
もちろん、自分では認めていなかったけれど。

エースの言葉を待って数秒。
ふと視界が翳り、彼の輪郭がぼやけた。
唇に触れた熱はすぐに遠ざかっていく。

「…行動じゃなくて」
「伝わるだろ?なら、キスした方が早い」
「…エースは一回、女心って奴を…」

ナースに聞いてきたら、と言う言葉は続かなかった。
確かに彼女たちは聞けば教えてくれるだろうけれど、面白がって手取り足取りであれやこれやと教えてくれそうな気がする。
もちろん、私とエースの関係を知っているし、あたたかく見守ってくれているから絶対駄目な一線は越えてこないだろうけど…それでも、やっぱり駄目。

「女心がどうした?」
「んーん、何でもないから気にしないで」

そう誤魔化すと、座るエースの膝の上に向き合うように乗り上げる。
重く…はないと思う。
彼はいつも当たり前のように膝の上に私を抱き上げるから…たぶん。

「じゃあ、言葉で言わなくていいから…足りないと思ったら、キスして?」
「そうだな。それの方が楽そうだ」
「…楽?」
「…っつーか、嬉しい?ありがたい?…役得、か」
「何それ」

役得も何も、これはエースだけの特権だ。
クスクスと笑う私の唇を掠めていくそれ。
額を合わせ、息が絡む距離で笑い合う。
微温湯のようで、それでいて火傷しそうなほどの熱を帯びた時間。
それを愛おしむように、触れた肌から互いの体温を共有した。

ポートガス・D・エース / Black Cat

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11.06.03