047.期限付きの愛をちょうだい

「進路?」
「前に、調査票が配られたでしょ?あれの締切、明日だって」
「あ」

今思い出した、と言いたげな流川に、はぁ、と溜め息を吐く。
この分だと恐らく、調査票は学校の机の中か、カバンの隅で潰れている。
ガサガサとカバンを漁った彼の手がボロボロの紙を取り出した。
いっそ、机の中に置き去りにされていた方が活用できる分マシかもしれない。

「お前はどうすんだ?」
「何が?」
「進路」
「進学よ。海南とかもいいかなって思ってる」

海南は興味のある学部を抱えているから、候補の一つとして挙げている。

「まぁ、まだ1年だからどうなるかわからないけど。…流川は?」
「アメリカ留学する」
「………うん、英語…頑張ってね」

彼ならそう言ってもおかしくないと思っていたし、何度もその手の話は聞いているけれど。
流川の成績を知る彼女としては、うん、素敵だね、なんて言えないのが本音だ。
応援したい気持ちは山々だが、頑張れとしか言えない。

「英語くらい別に大丈夫だろ」
「いや、大丈夫じゃないから」
「お前いるし」

え?と言葉を失っている間に、二人はマンションの下へと到着した。
彼女をエントランスに促してから、自転車に跨った流川は「また明日」と言って走り去っていく。
一人残され、その背中を見送った彼女は、呆然と呟いた。

「私は…隣にはいないよ。…だって…卒業したら、この関係は…終わり、でしょ…?」

誰に告げるでもない言葉が、空へと溶けていく。
期待させないで、と否定する感情と、期待させて、と願う感情。
複雑な感情を乗せて、そっと息を吐き出した。

流川 楓 / 君と歩いた軌跡

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11.06.01