046.注ぎ込まれるのは、毒
「私…もっと、毒気のある男の方が好みなんだと思ってたわ」
そう呟いて傾けるグラスの中に入っているのは、間違っても酒ではない。
隣に座るビアンキが、そうね、と同意する。
「自分も十分まがっている自覚があるし…まさか、あんな爽やかな青年にコロッとやられるなんて、ね」
誰が想像したかしら、と苦笑した。
「恋なんてそんなものよ。自覚したら、誰にも止められないの」
「うん、そうかもしれない」
「私にはリボーンが一番素敵だけど、あの子もそう悪くないと思うわ。少し頼りないけれど」
頬を染めてリボーンを見つめるビアンキを横目に、山本へと視線を向ける。
正直、こんな風にはまってしまうなんて思わなかった。
自分の考えていたタイプは年上の大人だ―――そう思っていたから。
あの爽やかさにやられたと言えばそれまでなのだが…何となく、違う。
「毒気を抜かれたって言うか、寧ろ注ぎ込まれてる感覚…?」
彼と言う空気が、徐々に徐々に内部を侵食しているような感覚だ。
「まぁ、仕方ない…か」
ビアンキの言うように、恋と言うのはそんなものなのかもしれない。
まだ“愛”と表現するには早すぎる小さな小さな芽だけれど、確実に成長する兆しを見せているそれ。
「何が仕方ないんだ?」
「んー?色々あるの」
いつの間に近くに来ていたのか、山本が顔を覗き込んできて問いかける。
初めの頃こそ敬語?のような話し方だった彼も、今となっては随分と打ち解けている。
「色々って?」
「さぁ、何かしらね」
気にしないで、と言うと、彼は少しだけ悩んでから忘れたように、そっか、と笑う。
「今度…並中の野球部、試合があるんだって?」
「あ、見に来てくれよ!」
「…活躍、期待してもいい?」
「当然!惚れるくらいに活躍してやるよ」
相変わらず爽やかに笑うと、ツナに呼ばれて席から離れていく。
それを見送り、小さく息を吐いた。
「…麻薬ね、まるで」
少しだけ熱を持った頬を冷やすかのように、パタパタと扇いでみた。
認めるのが嫌だとか、そう言うわけではないけれど…とりあえず。
山本 武 / お姉さんシリーズ