037.わたしを苛む、あの日の記憶

ルキアを見ていると、不意に緋真様を思い出す事がある。
もちろん、二人は姉妹で…その容姿もよく似ているから、思い出しても不思議ではない。
病弱だった緋真様は、元々の性格もあったのか、穏やかで慎ましい女性だった。
ああだった、こうだったと言えるほど彼女と言葉を交わした事はなく、垣間見た印象でしかないのだけれど。

それに対して、ルキアは活発だ。
行動的と言うべきなのかもしれないけれど…彼女とは、違う。
わかっているはずなのに、時々ふとルキアに彼女の影が重なってしまう。
重ねてはいけない、重ねるべきではないと思えば思うほどに。

「姉様?」

本当であれば、ルキアにそう呼ばれるのは彼女だった。
ルキアに姉と呼ばれ、白哉様の隣に立つ―――この場所は、彼女のものだった。

「姉様、どこか具合でも…?顔色が優れないようですが…」
「…大丈夫。昨日、寝つきが悪かっただけだから…心配しないで?」

安心させるように微笑んだつもりが、逆にそれを煽る結果になってしまったようだ。
眉を顰めるルキアを見て、そう悟る。

「姉様…もしや…」

ルキアはその続きを飲み込んだ。
恐らく、彼女は私の反応から何かを察してしまったのだろう。
けれど、それを口に出さないでいてくれるのは、彼女の優しさだ。
悩んだ末、彼女は名案を思い付いたと顔を輝かせた。

「姉様!昼寝をしましょう!」
「………昼寝?」
「はい!昼寝をすると、悩み事なんかはパーッと忘れてしまうものだと恋次が言っていました」

睡眠不足も解消されて、一石二鳥です!
これ以上の名案はないとばかりに胸を張る。
貴族として、それなりに厳しく育てられた私には、まず思いつかない発想だ。
けれど…彼女の優しさに触れ、足元に迫っていた闇が、音もなく引いていくのを感じた。

「今の時間帯は、どこがおすすめかしら?」
「そうですね…離れの縁側が良いと思います。行きましょう」

さぁ、と立ち上がり、私を促すルキアを見上げる。
やはり、ルキアは彼女とは違う。
今はっきりと、それを自覚した。

「…ありがとう、ルキア」

その声が届くと、彼女は照れたようにはにかんだ。

朽木 ルキア / 睡蓮

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

11.05.17