032.容易く手に入るものなんて

「障害が大きければ大きいほど、得た時の感動もそれに比例する」
「…そうかしら?私は何事もスムーズに片付くのが一番だと思うけれど」
「容易く手に入るものなんて面白味に欠けるだろう?」
「………だからと言って、毎度私の仕事先に出現するのはやめてもらえるかしら」

こっちは関わりたくないんだよ、と言う感情を化粧の下に押し隠し、笑顔でそう言う。
ルビーの仕事の最中にこの男と顔を合わせるのは、これで10回目だ。
両手では足りない数になってきている以上、偶然だなんて認めない。
そもそも、この男は一体どこからパンドラへの依頼の内容を探ってくるのか。
思い切り吐き出してしまいたい溜め息を飲み込んで、目の前の男を見据えた。
隙だらけに見せていながら、完璧に退路を断つ男。

「いい加減、諦めたらどうだ?」

男、クロロの手が顎を掬い上げる。
身長差の分を見上げる形にされ、睨み付けてみるもののもちろん効果はない。

「悪いけれど、あなたに興味はないの」
「それは残念だな。俺はお前に興味がある。その澄ました顔の裏に隠した本性を暴いてみたい」
「………」

思い切り猫をかぶっている身としては、何も言えない所だ。
いっそ、本性を露わにしてしまえば彼の興味はどこかへ消えてくれるだろうか。
そんな投げやりな事を考える。

「何度も言っているけれど。あなたの言う“私の本性”を見れるのは、私が気に入った相手だけ。誰にでも見せられるような安い物じゃないの」

他を当たって、と顎を取る手を振りほどく。
あっさりと手を引いた彼は、楽しげに目を細めた。

「まぁ、気長にやるさ」
「あなたこそ諦めてくれないかしら…」
「それは無理な相談だな」

くくっと喉を鳴らした彼は、一度は引いた手を私の前へと差し出した。

「とりあえず…一緒に食事でも?」
「一仕事の後で食事に誘う無神経さを疑うけれど…生理現象には逆らえないから、誘われてあげるわ」
「じゃあ、行こうか。良い店を予約してあるんだ」
「…どこまで計画的なの、あなた…」

クロロ=ルシルフル / ラッキー・ガール

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11.05.10