029.二人で墜ちてゆくなら、それでいい

許すものか、と言う声が聞こえた気がした。

目を覚まし、飛び起きるような真似はしなかった。
代わりに、はぁ、と重い息を吐き出して天井を仰ぐ。

今も後悔がないかと言えば、即座に頷くことは出来ない。
あれ以外の―――彼女を傷付けない方法はなかったのだろうかと。
少なからず、そう悔やんだことはある。

まるで、忘れる事など許さない、とでも言うかのように夢に現れる彼ら。
その魂が存在していて…なんて夢物語な話だとは思っていない。
これは、自分の後悔が作り出す幻であり、夢。
術師が自らの創造物に悩まされるなど…聞いて呆れる。

「骸…?」

もぞり、と肩を揺らした彼女が振り向いた。
起こしてしまったか、と心中で苦笑し、そっと彼女の額に触れる。

「何でもありませんよ」
「…嘘」

寝起きの少し気怠い声は、それでもはっきりと否定した。
瞬きをして身体を起こした彼女が、逆に僕の頬に触れてくる。

「夢でも見た?」
「………そんなところです」
「…そう」

その内容までは聞かず。
彼女はそのまま静かに口を噤んだ。
けれど、恐らく彼女は気付いているだろう。

「…一人で背負わなくていいのよ。「あなたはもう、独りじゃないんだから。あなたの罪は私の罪でもある。一緒に背負うと決めたもの」
「………あなたと言う人は…」

被害者であるはずなのに、共に背負うと言う。
どこまで優しい人なのか…呆れるよりも先に嬉しいと思う自分に、苦笑が零れた。

「…ありがとう」
「…どういたしまして」

身体をシーツに横たえ、クスリと笑う彼女。
彼女の額に、そして唇に口付け、その隣へと身体を横たえた。
もう夢は見ないだろう。

六道 骸 / 黒揚羽

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11.04.28