028.剣の向こうの君の笑顔

「何だかすっごく良い笑顔なんだけど」

木刀を振る彼女の姿を見ながら、そんな事を呟く。
隣にいた氷景が小さく笑った。

「どっちのことだ?」
「筆頭もあの子も、両方よ。いつもあんな感じ?」
「…まぁ、大体はそうだな」

正直、信じられない、と思う。
一歩間違えば大怪我をするようなやり取り。
手加減、と言う言葉は二人の頭の中に残っているのだろうか。

「全力に見えるけど」
「いや…あれで二人とも五割程度だな。あの人たちの実力はあんなもんじゃない」
「あぁ、そう…あれで」

五割にしたって、相手は自分の夫で、自分の妻で。
少なくとも、木刀を向け合う相手ではない。
冗談半分で、バイオレンスな夫婦ね、と思う。
もちろん、そんな殺伐とした空気はそこにはなく、寧ろ互いを高め合う昂揚感を抑えきれない様子だ。

「あの二人はあれが普通なのよね」
「日常である事は確かだな」
「…見慣れるまでは心配で禿げそうな気がするけど…その内慣れるわね、私も」

禿げる…と言う氷景の小さな呟きを無視し、二人を見つめる。
長い攻防が終わりを迎え、木刀が宙を舞った。
肩で息をした彼女の首筋へと政宗の刀が添えられる。
勝敗が決まったようだ。

「さて、と…二人のために冷たいお茶でも用意してこようかな」

よいしょ、と腰を上げると、氷景の視線が私を見た。
けれど、すぐにその視線は彼女へと戻っていく。
どこまでも忠実な忍に口角を持ち上げてから、縁側を後にした。

親友 / 廻れ、

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

11.04.27