027.紅い糸で絡め取る、君が逃げられないように
全てが順調だったわけじゃない。
一緒に育って、離れて、また一緒になって…離れそうになって。
どこかで何か一つでも選び取る未来を間違えていたら、彼女は今ここに居ないのだろうかと。
ふと、そんな事を考える時がある。
「俺らしくないとは思うけどね」
眠る彼女にこの声は届かない。
届かないとわかっているからこそ、声に出したのだから。
「運命なんて言葉を使うつもりはないけど…」
それでも、彼女がここに居るのは、それが当然だと思う。
例えば過去のどこかで、違う道を進んだのだとしても…やはり、自分の隣には彼女がいる気がするのだ。
自惚れだと言われればそうかもしれない。
けれど、そう思う自分を否定できなかった。
それを自覚した時、赤い糸なんて目に見えない曖昧なものではなく、確かな繋がりが欲しくなった。
まだ彼女の全てを守る力も何もない。
それでも、何か―――そう考えた次の日には、彼女の指に合うだろうそれを選びに行っていたのだから…自分の取った行動ながら、突発的だったと苦笑する。
「とりあえず、次のスタメンを勝ち取らないとね」
日本からは遠い異国の地。
“まだ”家族ではないけれど、いずれそうなる約束も交わした。
誓いの証が光る彼女の左手を絡め取り、そっと口付ける。
椎名 翼 / 夢追いのガーネット