025.執着と愛の密接な関係
傍らにいないならば、存在する必要なし。
まるで、そう告げるかのような、カウントダウンが始まって、今日で2週間。
身体の不調が始まったのは、彼と離れた三日後だ。
別行動をすべきではないと言う彼の心配を「大丈夫」と笑顔で押し切り、本拠地にとどまった。
理由は、前の旅で負った怪我の治りが遅いから。
決して命を左右するような怪我ではなかったけれど、共に行けば足を引っ張る結果になっていただろう。
「大丈夫か?」
「…ええ」
「酷い顔色だぞ」
心配してくれるフリックに、何とか笑顔を返す。
けれど、それは弱々しいものになってしまい、逆に不安を増長してしまったようだ。
「ったく…厄介な紋章だな。傍にいれば力が増すのに、離れた途端に命を蝕むなんてなぁ…」
ビクトールが呆れたように肩を竦める。
それでも、外せないのか?と口にしないのは、その結果がどうなるのかを知っているからだ。
前の戦いの時に聞かれ、答えている。
「仕方ないわ。ソウル・イーターのお蔭で生き長らえた命だから…殺すも生かすも、彼次第なのよ」
「大した執着心だ。人間よりも酷いな」
苦笑するのも無理はない。
けれど、私自身はそれを苦痛だと感じていない事は、言わなかった。
誰かに教えるような事でもないと思ったから。
ソウル・イーターの傍を離れている所為で、身体の不調は日増しに酷くなる一方だ。
その半面で、この状況に安堵する自分がいる。
理由は二つ。
一つは―――この不調は、私がこの世界に必要とされている証拠だから。
そして、もう一つは…紋章越しに感じる僅かな苛立ちや心配の感情が、その主のものであると知っているから。
彼との距離が近付いているのか、昨日よりもその感情が深く流れ込んでくる。
他人の感情を受け取るなんて、彼以外であれば嬉しくなかったかもしれない。
でも、他ならぬ彼のものだから。
一心に向けられるそれを、嬉しいと感じてしまう。
「リーダーが帰って来たぞ!!」
門の方から、そんな声が聞こえた。
私は椅子から立ち上がり、声の方へと歩き出す。
私を誘うのは兵士の声ではなく、紋章越しの“声”。
―――早く、早く。
導かれるままに進んだ先に、彼がいた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
感じていた不調は、嘘のように消えていた。
1主 / 水面にたゆたう波紋