024.爛れてしまったのは、きっと
彼のことを考えるだけで、食事も喉を通らない。
彼を一目でも見られた日は、いつも以上に世界が明るくて。
彼と目があった日なんて、空も飛べるんじゃないかって思うくらい。
誰にでも優しい眼差しは、言い換えれば誰にでも平等だった。
だから、安心していたのに。
「…どういう、こと?」
「あぁ…あんた、休んでたから知らないんだっけ」
毎朝同じ時間に校門を通る彼を見るために、教室に入るのはいつだって一番乗り。
季節外れの風邪の所為で久々の登校になった今日、教室の窓から彼を見るのが楽しみで仕方なかった。
それなのに―――彼の隣には、知らない女子生徒。
ううん、面識はないけれど…一方的に、知っている。
「付き合い始めたみたいよ。今では全校生徒どころか先生や校長まで知ってるんじゃない?」
「…いつ、から?」
「あんたが休み始めた日かなぁ…たぶん。翌日には、一緒に登校してたし」
「………」
沈黙する私に、彼女は苦笑を浮かべてポンポンと肩を叩く。
「…サボるなら付き合うよ」
親友と言える彼女は、私の気持ちを知っている。
軽い口調で説明してくれていたのは、少しでもショックを和らげようとしてくれていたのかもしれない。
小さく頷く私の手を取って、教室を出ようと立ち上がる彼女。
歩き出す前に振り向いた窓の向こうで、二人が楽しげに笑っていた。
火傷、なんて可愛らしい物じゃない。
ドロドロに爛れた感情が癒える日は、まだ遠い。
南野 秀一 / 悠久に馳せる想い