023.好きなら奪ってみせて

あ、と呟く声が重なった。
中身を見た彼の笑みが深まるのを見て、失敗した、と心中で舌を打つ。

「これ、何?」

笑顔だけれど、笑顔からは程遠い笑顔だ。
言っている事が矛盾していると言う自覚はある。

「釣書と写真、ね」
「何でこんなところにあるの?」
「母さんの…一種の病気みたいなものなのよ」

唯一の女の子と言う事もあり、昔からそちらの方面への期待は大きい、いや、大きすぎる。
一応はヒソカに落ち着いた筈だった。
だが、数ヶ月経っても進展しない状況に、彼女の病気が再発したようだ。
それにしても、段ボール5箱分とは…一体、どこからこんなに大量の見合い相手を探してくるのだろう。

「で?」
「“で”?」
「これ、どうするつもり?」
「処分するつもりだけど」

冗談で要るの?と問えば、うん、と言うイイ返事が返ってきた。
思わず目を丸くする私に、彼はにこにこと笑うだけ。
一体何に使うつもりなのか…聞く必要など、ない。
しかし、これは良い機会なのかもしれない。

「ねぇ、ヒソカ」
「何だい?」
「好きなら奪って―――って言ったら、叶えてくれる?」

わぁ、レアな表情!
目を見開いて固まるヒソカなんて、そうそう見れるものじゃない。
ここにカメラがない事を悔やんだ。
やがて我に返った彼は、先ほどとは違う質の笑みを浮かべる。

「もちろん★」

後日、有名な格闘家やらハンターやら…とにかく、ゾルディックも認めるような連中が何人も、不可解な死を遂げた。
これでゾルディックと見合いをしようなんて馬鹿な事を考える輩が少しでも減ってくれるといいのだけれど―――やはり、そう甘くはないらしい。

「さて…ヒソカが帰ってくる前に処分してしまわないとね。無駄に人口が減りそうだわ」

3段に積まれた箱を見下ろし、溜め息を吐き出した。

ヒソカ / Carpe diem

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11.04.18