018.君が纏う雰囲気が好き

月に刀をかざす。
外套に口元を埋めたままその背中を見つめ、小さく小さく息を吐く。
何の変哲もない、いつもの光景だ。
手入れの行き届いた刀を月にかざす…ただそれだけ。
それなのに、どうしてこんなにも美しいと思えるのだろうか。
あの刀が人の命を奪った回数は、おそらく数えきれないほどだろう。
幾人もの人を斬り、そして守ってきた刀。
それを見つめる政宗様の眼は、何を思っているのだろう。
背中だけでは、政宗様の心中を知ることは出来ない。
無音で刀を鞘へと納めるその一連の動作を見つめ、彼が振り向くより早く、彼に知られぬようにと瞼を伏せる。
眠気はまだ、当分訪れそうにない。





若葉が朝露を弾く。
ヒュン、と風を切る音が聞こえた。
耳に障るほど大きな音ではなかったけれど、その音が覚醒を促す。
肩から落ちそうになる外套を羽織りなおし、音の方へを草を踏んだ。
そこにあったのは、少し開けた場所で、無心で刀を振るう彼女の姿。
何も映していないように見えて、彼女はしっかりと前を見据えている。
自らの手足のように刀を操り、もう片方では関節剣を唸らせる。
凛とした空気を纏い、静かな空を斬る彼女。
やがて、手元へと戻した関節剣を鞘に納め、小太刀を持つ手を下ろす。
朝露と、軽い汗に濡れた髪を掻き揚げる仕草。
一瞬、呼吸を忘れてしまうような、美しい光景。
顔を上げた彼女が自分に気付き、先ほどまでの空気とは違うそれを纏い、穏やかに微笑む。

「おはようございます、政宗様」
「ああ」
「お早いですね」
「お前が言う事か?」

小さく笑えば、そうですね、とクスクスと笑って口元を隠す。
刀を持つ彼女と持たない彼女は、正反対の空気を持つ。
けれど、それはやはりどこかで繋がっていて―――それが、彼女と言う人間を作り上げているのだ。

「休んだか?」
「ええ、しっかりと」
「そうか。気を抜くなよ」
「もちろん」

そうして頷く彼女は自信に満ちた目をしていた。
だからこそ、彼女を隣に置いておける。
共に、同じものを目指していける。

「行くぞ」
「はい」

夢を共有する彼女に、手を差し出した。

伊達 政宗 / 廻れ、

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11.04.11