017.このまま夜が明けなければ

賑わっていた本拠地も、夜が更けるに連れて音が消え、今ではシンと静まり返っている。
いくら待っても眠気が訪れないのは、明日に対する緊張なのだろう。
いっそ、夜などなく突然明日がやってきてくれればいいと思う。
そうすれば、こうしてゆっくり考える時間もなく、求められるままに前へと進んでいけるから。

「まだ起きていたの?」

テラスに聞こえた声は、他の人間に対する配慮から、とても小さいものだった。
けれど、それ以外の音のない世界では、その声は十分聞こえる。

「うん。月が綺麗だよ」

おいでよ、と誘えば、彼女はゆっくりと隣にやってきた。
並んだ彼女の姿を見て、小さく苦笑する。
そして、羽織っていたマントの片方を解き、その中に彼女を抱き寄せた。
その体温は、今まで眠っていたものだとは思えず、彼女もまた、自分と同じなのだと知る。

「本当。綺麗な月ね」

マントの中で同じ熱を共有しながら、並んで空を仰ぐ。
夜が逃げ、朝が来たら二人は戦場に立つ。
どちらもその事を口にはしなかったけれど、互いに何かを感じていた。

「…もう休まないと」
「うん、そうだね。………もう少しだけ」

あの月がこれ以上傾かなければいいね。
声に出さず、そんな事を考えた。

1主 / 水面にたゆたう波紋

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11.04.08