014.君が傍にいるだけで、こんなにも暖かい
そろそろ機嫌を直さないか。
そう言っても、彼女はつんと顔を背けてしまう。
それでも、俺の傍を離れようとしない事に、自惚れてもいいだろうか。
「そのままでは何もできないんだがな…」
苦笑してその金色の毛並みを撫でる。
何がお気に召さなかったのかはわかっているが…とにかく、彼女は妖狐の姿を取り、ただただ沈黙と共に俺の傍らに伏せていた。
その場を動く気はないようだが、姿を戻すつもりもないらしい。
彼女の感情の揺れ動きを示すかのように、ゆらり、ゆらり、と動く美しい尾。
触れると、まるで逃げるようにするりと手の平を抜け出していくそれ。
今の彼女を象徴しているようだった。
「………明日には帰る。それでいいだろう?」
折れるのが癪だったわけじゃないが、これ以上彼女の機嫌を損ねない方法は一つしかなかった。
小さな溜め息と共に言葉を吐き出し終えたと同時に、背中に感じるぬくもり。
「仕方ないから、それで許してあげるわ」
そう言って、背中側から頬へと口付けられる。
するりと首に回された腕と、背中を包む体温に、静かに瞼を伏せた。
妖狐の彼女が気に入らないわけではない。
けれど、やはり彼女にはこの姿でいてほしいと実感した。
妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い