013.笑って誤魔化さないで

「まるでアルバロの為にあるような日ね…」

ミルス・クレアタイムズを読んでいた彼女がぽつりと呟く。
何となく過ごしていた休日、お互いに同じ空間を共有しながらも別の事をしていた二人。
傍らで瞼を閉じていたアルバロが、その目を開いて彼女を見た。
視線に気付いたのか、彼女が「起きたのね」と言う。

「異国のイベントなんだって」

そう言って、彼女はタイムズの記事を彼に見えるよう持ち直す。
そこに書いてある文章にザッと目を通した彼は、ふぅん、と口角を持ち上げた。

「中々面白いイベントだね」
「普段から本音で生きていないあなたには、ある意味無縁かもしれないけれど。ミルス・クレアでこのイベントがあったら、間違いなく参加するわよね」
「それは当然。世間的に嘘が許される日なんて、面白いよ。尤も、真実と虚実が混在するからこそ面白いんだけどね」
「…そう言う所、性質が悪いと思うわ」

嘘の中に真実が含まれているからこそ、人は信じ、そして騙される。
その巧みな話術は、彼にしかできないのかもしれない。

ふと、真顔に戻ったアルバロが、そっと彼女の頬に手を伸ばした。

「そんな事より…そろそろ、俺の方を見てみない?君の視線を独占するミルス・クレアタイムズに妬きそうなんだけど?」

甘い表情で告げられた言葉は、彼女の予想の斜め上を行くものだった。
思わず目を見開いて固まった彼女は、ほどなくして意識を取り戻し、溜め息を吐き出す。

「冗談も程々にして」
「冗談だと思うの?」
「………冗談、でしょう?」
「さぁ、どうだろうね。君はどう思う?」
「…わからないわ。…笑っていないで、どっちなの?」
「嘘か本当か…信じるのは、君だよ」

その笑顔で全てを曖昧にし、答えを彼女に委ねてしまう。
本当に、彼の中に答えが存在しているのだろうかと考えた。
それが表情に出ていたのか、彼は小さく笑い、違うよ、と言う。

「答えが出るまでは、頭が俺で占領されるでしょ」

その言葉すらも彼の策なのか―――それとも、本心なのか。
天秤のようにぐらりぐらりと揺れるこの関係を、楽しいと思える自分が少しだけ不思議だった。

アルバロ・ガレイ / Tone of time

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11.04.01