010.月夜の再会

「あ」

お互いの口から、間の抜けた声が零れた。
数秒の間。
沈黙して見つめ合った二人だが、第三者により世界が動き出す。

「逃げないで。これ以上時間を浪費したくないの」

そう言った彼女の手が生み出した風が男を刻む。
血の中に崩れ落ちたそれを、二人はこれと言った感情もなく見つめた。
そして、改めて視線を合わせる二人。

「久しいわね。あの時とは逆の立場だけど。元気だった?」
「あぁ。そちらも変わりはないようだな」
「ええ。最近は裏が荒れてるから、こっちは大忙しよ」
「そうなのか?」

まるで自分は無関係と言いたげな彼に、彼女は深々と息を吐く。
彼に嫌味が通じないことくらいはわかっていたけれど、こうも忙しくては文句の一つや二つはご愛嬌だ。

「旅団がマフィアを荒らしてくれたお蔭で商売が繁盛して仕方ないの」
「あぁ…そう言う事か」

すまなかったな、なんて思ってもない事を口にするあたり、世渡りは上手いと言えるだろう。

「詫びの印に夕食でも奢るか?」
「是非―――って答えたいところだけど、遠慮しておくわ。約束があるの」
「ヒソカか?」
「ええ。あなたが相手だと後から荒れて大変なの」

何もあるわけないのにねぇ、と他人事のように語る彼女。
その言葉を聞いて、彼は少し黙り込んだ。

「…お前と?あり得ないな」
「………それ、結構失礼だと思うんだけど。これでも引く手数多なのよ、私」
「いや、お前とはこの関係が丁度いい。面倒がないからな」
「面倒って………はぁ。ま、褒め言葉として受け取っておくわ」

肩を竦めた彼女は、事切れた男の傍へと歩み寄り、その手からカバンを取る。
中身を確認し、目当てのものを取り出すと、カバンを手放した。

「私も、あなたとの関係が丁度いいと思ってるわ。お願いだから、下手にヒソカを挑発しないでね。気の合う友人を探すのは大変なの」
「向こうは本気で殺り合いたいらしいがな」
「無視していいから。その内別の所に興味が移るわ」
「…恋人に対する言葉とは思えないな」
「まだ恋人のつもりはないもの。さて、と…そろそろ行くわ」
「あぁ。またな」
「ええ、また」

そうして、月明かりの下で出会った二人は、音もなく消えた。

クロロ=ルシルフル / Carpe diem

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11.03.29