004.告白前の、ほんの少しの逡巡
数十年来の想いを漸く通い合わせた。
緋真様だけだと思っていた白哉様の心の中に、私の居場所があるのだと教えてもらったあの時。
伝える事はないと決めていた言葉を口にして、白哉様の優しく、そして嬉しそうな微笑みに、ただただ幸せだった。
そして、今…何がきっかけだったのかは覚えていないけれど。
すごく―――白哉様に、この想いを伝えたいと思っている。
「あまり頻繁に言葉にしたいとは思わないのに…」
何故だろう、と自分自身の気持ちがわからず、首を傾げる。
頻繁に口にすればするほど、言葉の重みを失うような気がしている。
事実、口数の少ない白哉様からの言葉はとても重く、そして深い意味を持っているから。
私自身もそうありたいと思っているし、実際そうしてきたつもりなのだけれど…。
「………」
考えて悩んで決心して、躊躇って。
それでも結局、伝えたいと言う想いは止められそうになかった。
今まで、どうやってこの言葉を飲み込んでいたのか…不思議なほどの、ある種の衝動にも似た感覚。
「…愛しています、か…」
白哉様が目の前にいるわけでもないのに、胸にほんのりと熱が灯る。
声に出した言葉はより深い感情となり、私自身の鼓膜を震わせる。
自然と、口角が緩むのを感じた。
よし、と心を決める。
逡巡するのは、もう終わり。
襖を開いて彼の気配を辿る。
私に気付いた白哉様が振り向き、そして穏やかな表情を浮かべるのが見え、それだけでどうしようもなく打ち震える心。
感情が溢れるとは、この事だろうか。
「白哉様―――」
朽木 白哉 / 睡蓮