094.その扉の向こうは、誰にも話せない秘密の部屋がある
長い廊下を奥へ奥へと進む。
陽の光も届きかねるような城の最奥。
進んだ先に、一つの扉。
重そうなそれを押し開いた先には―――
「大量の猫!」
ぴっと人差し指を立てた私がそう言うと、彼女はきょとんとした視線を返した。
「って夢を見たの」
「ふぅん…」
あぁ、夢の話。
そんな納得した様子の彼女に、どこか違和感を覚える。
「部屋中、猫、猫、猫!暗闇から見つめる双眸が怖いのなんのって!」
思い出しただけでもぞくぞくする、と肩を抱く。
すると、彼女の視線がふいっと横に逃げた。
自然な動きではあったけれど、逃げたことは間違いない。
「…なんで目を逸らすの?」
「…別に」
「………まさか、米沢城にそんな部屋がある、とか?」
「ないわよ。…たぶん」
それはない、と即答する彼女だが、全てを知っているわけではないので少し自信がなさそうだ。
なるほど、部屋があるわけではないとすると。
「猫」
「…」
正直者と言うかなんというか…彼女の肩が、揺れた。
じーっと視線を向け続けると、彼女は観念したように溜め息を吐き出す。
「中庭の隅に穴があって…庭によく、猫が入ってくるの」
「なーんだ。別に不思議じゃないよ、それなら」
つまらない、と呟くけれど、表情を見る限り、まだ続きがありそうだ。
「少し残り物の煮干しをあげたら懐いちゃって…」
苦笑する彼女が立ち上がり、中庭に面する障子を開く。
そこに広がる光景は、夢ほど恐ろしいものではなかった。
けれど、一目何匹?と数えたくなる程度の猫たちが、庭先でのびのびと日向ぼっこをしている。
どこから集まったのか―――その数は、優に20を超えていた。
「これ…あんた一人で全部?」
「そうだと思ってどうしようって反省してたんだけど…どうも違うみたいね」
ほら、と彼女が指差した方には、見回りの兵士が一人。
辺りをきょろきょろと見回したかと思えば、のびのびしている猫たちに近付き、懐から何かを取り出した。
途端にわっと寄ってくる猫に、ほんの少し、厳しい表情が和らいでいる。
「ああいう効果もあるみたいだし…政宗様に相談して、とりあえずこのまま放っておくことにしたの」
「へぇー…筆頭、許してくれたんだ」
「優しい人だから」
そう答えた彼女の表情はとても穏やかだ。
優しいからと言うのも否定はしないけれど、きっと、筆頭は彼女のこういう表情が見たくて、許したんだろうと思う。
筆頭も甘いなぁ、なんて思いながらも、バランスの取れた二人を見ているのが嫌いじゃなくて、寧ろ微笑ましくて好きだったりする。
「ねぇ、あの猫って撫でられる?」
「中には人懐こい子もいるから、大丈夫よ。にぼしをあげてみる?」
「あげたい!」
「じゃあ、持ってくるね」
親友 / 廻れ、