088.言葉はどうしてこんなにも、わたしを裏切るの

「これ、どう思う?」
「どうって…何、これ?」
「織姫の絵なんだけど」
「どうかな!?」

期待に満ちた目と、何だか同情を含めた目。
二種類の視線を受け、私は言葉を選ぶように、うーん、と間を繋いだ。

「………織姫らしいとは思うんだけど…この辺が、ちょっとね…」

出来るだけ、期待を裏切らないよう配慮したつもりだ。
とは言え、褒めることは出来ないのでこれが限界。
この辺、と指差した辺りを見た織姫が、パンッと手を叩く。
その表情は、何だか輝いていた。

「やっぱりそうかな!?ここは、もう少ししっかり描いた方が良いかと思ってたんだ!!」
「え、あの…違…」

私の返事など聞かず、織姫は自分の絵を持って席へと戻る。
そうして、広げたまま片付けていなかった筆を手に取り、キャンバスに向き直った。
伸ばした手が所在無く宙をさまよう中、ぽん、と肩を叩くたつき。

「…どうしよう、会話が全然成り立ってない」
「うん。あんたは頑張ったよ。織姫は傷ついてないし、嘘も言ってないし…いいんじゃない?」
「…うん。そう思う事にする」





「うぉ…井上の絵は………斬新だな」
「だよね」
「個性的っつーか…一種の芸術か?特にこの辺り」
「………」
「ん?どうしたんだ?顔を逸らして」
「その辺…何か、私が焚き付けたみたいな感じで」
「はぁ?」
「知ってたけど…あの子との会話って難しいわ。でも、あのポジティブさは見習うべきなのかな」
「………別に、お前はお前でいいんじゃねぇの?あんな風にポジティブなお前、想像できねぇだろ」
「…確かに」

井上 織姫

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11.02.23