081.眠り姫に口付けて、それからどうしよう
夜、ふと目を覚ますと、隣ですやすやと眠る彼女が視界に入った。
昼間もよく眠っている姿を見るけれど、だからと言って夜眠れないと言うわけではないらしい。
よくもまぁ、そんなに眠れるものだと思ったものだけれど、猫の習性が色濃く出てしまっているのかもしれない。
頬を撫でても起きる気配はなく、小さくその名を呼んでも身じろぎするだけで目を開く事はない。
熟睡しているらしい彼女に、シャンクスは穏やかな表情を浮かべていた。
自分の隣が、熟睡できるほどに落ち着く場所なのだと言う事だ。
甲板で眠る彼女は、仲間の足音で起きているようで熟睡はしていない。
声をかければ即座に顔を上げるから、ただ目を閉じて日向ぼっこをしているだけに近いのだ。
それが、今はどうだろうか。
声をかけようが触れようが、彼女は眠ったままだ。
「俺だけ、なんだよな」
その事実がどうしようもなく嬉しいと思う。
思春期なんて当の昔に終わったはずなのに、こんな小さなことが嬉しいなんて。
誰にも言えないな、と苦笑してから、薄く開く唇に自身のそれを重ねた。
「まだ起きなくていいからな」
そう言って唇を重ねるだけの、静かで優しい時間。
それは、シャンクスだけが知る、秘密の時間でもあった。
シャンクス / Black Cat