063.僕はあの日誓ったんだ、あなたを守ると
姉さんは、自分がこの数年間、ずっとイタリアにいた事を俺の所為だとは言わなかった。
俺の為だとも言わない。
でも、それが現実だと知っている。
それを知った時の後悔は、今思い出しただけでも奥歯を噛み砕いてしまいそうだ。
一度でも過去に戻れるなら、呑気に生きていた自分を殴って、目を覚ませと言ってやりたい。
例えば10年前の俺がバズーカを使ってくれたとしても、俺自身が入れ替わってしまうから会う事は出来ない。
過去に戻る事なんて出来ないけれど―――それでも、俺はずっと、この後悔を胸の奥に抱えて生きていくんだろう。
気にするなと彼女は笑う。
その笑顔を見る度に、心の奥の闇がズクンと疼いた。
「…綱吉は、忘れてくれないのね」
勘の良い彼女が気付かないはずもなく。
気付いた彼女は、そう言って悲しげに目を伏せた。
「もういいって言ってるのに」
「…うん。わかってるんだ。だけど…たぶん、ずっと忘れられない」
「どうしたら忘れてくれるの?私は今、こんなに幸せなのに」
そう言って唇を尖らせて俺の肩に頭を預ける彼女。
こうして、彼女が自分の気持ちを受け入れてくれるまでには、それはもう色々とあった。
その苦労も今の幸せを思えば、何でもないようなものだ。
「守るよ。あの夜誓ったように…俺が一生、守るから」
「綱吉…」
正面から彼女の顔を見つめ、俺の想いの全てを告げる。
まるでプロポーズみたい、と照れたように小さく笑う彼女に、俺もまた、釣られるように笑みを浮かべた。
「それは…もうちょっと先かな。ムードを考えて考えて考え抜いてから、だね」
「…うん。楽しみにしているわ」
笑った彼女のキスを頬に受けるのは、もう何度目になるだろう。
一度吹っ切れてしまった彼女は、時折イタリア生活の長さを感じさせる大胆さを垣間見せる。
もちろん、俺にだけだと知っているから、何も言わないし、寧ろ喜んでいるのだけれど。
「―――守るよ」
彼女の細い指に絡む空の指輪に触れ、誓うようにそう呟いた。
沢田 綱吉 / 空色トパーズ