061.人を愛すること、愛されること、そして憎むこと
めでたく…と言っていいのかわからないけれど、彼との関係が落ち着くところに落ち着いた。
あんな風に気にかけてもらって、毎日じゃないにせよ送ってもらって…落ちない女がいるなら、その秘訣を聞いてみたいと思う。
お世辞にも目つきが良いとは言えないし、愛想も良くはないけれど。
彼はとても誠実で、優しかった。
見た目とは違って、と言ったら黙ってしまうだろうから、言わないけれど。
彰と付き合っていた時には感じた事のない、ドキドキやわくわくの毎日。
これが人を愛すると言う事なんだと、初めて自覚した。
どちらかと言うとドキドキの方が大きくて、逃げ出したくなる時もある。
でも…やっぱり、傍にいてくれると嬉しくて。
感情を持て余しては、縋るように彼の袖を掴んでいた。
「お前、袖を掴むのが好きだよな」
少し笑いながらそう言われて初めて気づいた事。
指摘されて一番に湧き上がったのは羞恥心だったけれど、それでも離したいとは思わない。
そんな私に、彼はそのままでいいと笑ってくれた。
彼と恋人同士になって初めて、彰の気持ちが理解できた。
愛してくれていたからこそ、離れていく私が許せなかったのだろう。
愛憎は表裏一体だと誰かが言っていたけれど、その通りだと思う。
どうせなら、和解する前に、気付けたら良かった。
そうしたら…もっと早く、お互いに分かり合えたんだと思う。
「そういや、姉貴が時間があるなら寄ってけって言ってたぜ」
「んーと…明日菜さん?」
「あぁ、悪い。わかんねぇよな。明日菜であってる」
「じゃあ、寄っていくね。丁度前に話していたCDを持って帰ってもらおうと思ってたし」
「そっか。夕飯も食ってくか?」
「うん。手伝っていい?」
「別に良いぜ。つーか、そうしてくれると助かる。お前は慣れてるから心配しなくて良いし」
「毎日作ってる御子柴くんに褒められると本物って感じだよね」
「そうか?」
「うん。嬉しい」
御子柴 恭介 / 君恋