056.これが君の望んだもの、綺麗過ぎる、そら
全てが終わり、勝利に沸く城内、大広間。
次から次へと声をかけられ酒を勧められ―――漸くそれを逃れた頃、彼は二人がいない事に気付いた。
きょろきょろと周囲を見回す彼に、フリックが気付いた。
「どうした?」
「ティルさんとコウさんがいなくて」
答えてからも視線を右へ左へと動かすリオウに、フリックはあぁ、と答える。
そして、苦笑を浮かべた。
「あいつらはたぶん…いないだろうな」
「え?」
「昔もそうだった。玉座に促す話が出るよりも遥か前に、あいつらは国を出ていた」
「そんな…僕、まだ何も伝えてない…!」
過去の英雄の存在は、どれほど彼を支えてくれたか。
どれほどの力を与えてくれたか。
兄のように、時に父のように。
姉のように、そして母のように。
二人はリオウを見守り、助け、導いてくれた。
まだ、何も言えていない。
リオウは大広間から駆け出した。
間に合わないと知りながら廊下を走り、扉を開いて外へ。
城を飛び出し、見渡す限りの平原で、その姿を探す。
けれど、彼らの姿はどこにもなかった。
走って弾んだ呼吸を整えるように空を仰ぐ。
赤と藍の混ざり合う、夕暮れ時。
夜が更け、朝が来たとしても、もう戦わなくていいのだ。
絶妙なコントラストの空を見て、リオウはその事に気付く。
「…綺麗だ…」
もうどれほどの時間、こうして空を見上げていなかっただろう。
昔、子どもの頃はそれこそ毎日のように空を見て、笑って過ごしていた。
そんな日々が―――帰ってくる。
胸が詰まり、涙が頬を伝った。
終わったんだ。
もう戦わなくていい。
また…笑って、暮らしていける。
見上げた空は、どこまでも美しかった。
2主 / 水面にたゆたう波紋