050.今はまだこのままでいたい、そう望んではいけませんか
向けられる視線に気付かないほど鈍くはない。
更に言うならば、視線の主、綱吉はあまり自分の感情を隠す事に長けていない。
もちろん、感情が顔に出ると言う事は良い事だ。
いつからか、向けられる視線が熱を帯びるようになった。
昔から優しさを纏う視線ではあったけれど、そこに加わったもの。
時折、触れると火傷しそうなほどの熱を帯びるそれに、感じたのは当然の事ながら恐怖でも嫌悪でもない。
歓喜―――それが、最も近い感情だった。
たぶん、彼は私が彼に抱く感情を知らない。
ボンゴレの超直感で気付いても良さそうなものだけれど…そんなはずはないと思い込んでいるのだろうか。
私の感情が動き出したのは、10年後の彼を見た時。
あまりにも幸せそうに、そして愛おしそうに私を見つめる目で、気付いてしまった。
同時に、それが決して一方通行ではないと理解した。
つまり―――10年後の私もまた、彼を愛している。
―――素直になれるおまじない。いつか、きっと…ね。
彼はそう言っていたけれど、その目はそうは言っていなかった。
私自身が彼を愛する事を、縋るほどに切望した眼差し。
戸惑ったと同時に、胸が高鳴ったのを覚えている。
「―――ねぇ、綱吉」
「何?」
「もう少しだけ、待ってね」
「え?うん、もちろん。大丈夫だよ、そんなにお腹が空いてるわけじゃないし…ちゃんと待てるって」
脈絡のない言葉は、彼に本意を伝えられなかったようだ。
もちろん、そう仕向けたのは私。
知る必要はない―――けれど、口にしたかっただけ。
首を傾げる彼に、私は静かに笑顔を返した。
沢田 綱吉 / 空色トパーズ