037.ゆっくりと流れていく血の流れを、最後まで見ていたかった

子どもが生まれて、育って、一人立ちをして。
その子どもにまた、子どもが生まれて―――血は、ゆっくりと流れ、続いていく。

人間よりは長い寿命を持つ妖怪も、決して不老不死ではない。
あと何代、こうして自分たちの血の行く末を見守っていけるのだろうか。

「それにしても…世の中は広いわ」
「どうしたんだ?急に」
「少し…あの子のことを思い出したの。まさか、異世界だなんて…長く生きていなければ信じられなかった話ね」

クスリと笑う私に、蔵馬はあぁ、と納得した様子で頷いた。
私たちの子どもの、末の娘。
一子相伝の理を超え、私の結界能力を受け継いだ特殊な娘。
その気配が消えた時には本当に驚いたけれど、使い魔が一緒だったからさほど気にしてはいなかった。
まさか、その数ヶ月後に使い魔だけが戻り、彼女が異世界にいると言う話を聞くことになるとは思わなかったけれど。

「異世界、か…話を聞いて、思い出したわ」
「ん?」
「昔…私も、その世界に行ったことがあるの」

蔵馬に出会っていない、九尾としての誇りだけを持ち、孤高に生きていた頃の話だ。
もう随分前のことになるので、詳細は覚えていない。

「あの世界で…私たちの血が生きていくのね」

不思議だわ、と呟く私。
この世界に生きる…確か、曾孫だ。
そのどこかに、人間の血が混ざったと聞いた。
あまりにも人数が多いので、全てを把握していない。
親戚付き合いなどあるはずもなく、風のうわさで聞く程度。
妖狐は、一人立ちしてしまえば古巣に戻ってはこない。
孫や曾孫の何人かは、既にこの世にはいないらしい。
それを聞いた時も、特に悲しいだとか寂しいと言った感情はなかった。
巣を出れば、そこからは自分の足で歩き、進まねばならない。
私たちは、その先の将来に関わることを拒んだ。

「それにしても…面白いわ。いつか、あちらの世界に行ってみたいと思わない?妖狐と人間と、ぬらりひょん…合わせるとどんな子が生まれるのかしら」
「楽しそうだな」
「ええ、とても。本格的に時空のはざまを調べてみましょうか」
「他の異世界に送る人員が必要なら、協力しようか?」
「………何も、新たに作らなくても今存在している子か曾孫か…そのあたりを使えばいいと思うけれど」
「君の結界能力がなければ危ないかもしれないじゃないか」
「だから、本来は一子相伝で―――って、全然止めるつもりがないわね、あなた」
「そうだな」
「“そうだな”って…はぁ、まったく…」

妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い

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10.12.09