036.傷つけて傷つけて、更に傷つけて、それでもまだ足りなかった
「ねぇ、筆頭。気付いてるの?」
偶然にも、彼女がいない部屋の中に、政宗がいた。
ずっと、聞きたかったことを口にする。
「彼女、この所顔色が悪いわ。夜、中々眠れないの」
「…だろうな」
私が何を言わんとしているのか、彼は気付いている。
細められた独眼がその証拠だ。
「知っているのよね?私たちが、戦も何もない平和な世界で生きてきたこと。人を傷つけると言うことが、どれほど彼女を傷つけるのか。彼女が、どれほど心を痛めるのか」
知っているのよね、と問う。
きっと、私の目は平和的ではないだろう。
理解した上で、それでも言わずにはいられなかった。
彼女がそれを望んでいるのだとしても、私は彼女にそれをさせたくない。
彼女の心を守りたい―――たった一人の、大切な親友だから。
「彼女がどれだけ傷つけば、あなたの望む平和な世界を見られるの?その時…彼女の心は、“生きている”の?」
「…辛辣だな」
「当然よ。だって、私は世の平和よりも、彼女の心が大切だもん」
政宗はくくっと喉を鳴らして笑った。
彼が何を考えているのか…それを知るべく、じっとその表情を見つめる。
「悪いが、あいつがついてくると言う以上、俺は止めねぇよ」
「………うん、知ってる」
「だが、あいつの心は…俺が守ると、誓う」
こんな生意気な口を利く小娘に、彼は真剣に答えてくれた。
「………あなたほどの人が、どうして彼女を選んだのか…不思議」
私は肩を竦めてそう呟く。
彼女自身に言ったことはないけれど、ずっと思っていたことだ。
尤も、政宗の隣に並んでも引け劣らず、先を見据えて行ける人間だと…ちゃんと、理解しているのだが。
「残念だが、それはお前には言えねぇな。それを聞くのはあいつの特権だ」
そう言って、政宗が得意げに口角を持ち上げる。
その不敵な笑みの似合うこと。
「彼女のこと、よろしく頼みます」
深々と頭を下げれば、彼は当然だと頷いてくれた。
親友 / 廻れ、