032.どう足掻いても、あの空と同じ色は作り出せない

頼りないと思っていた背中を、いつの間にか誰よりも、何よりも信じていた。
気が付けばそうさせる―――大空の包容力。
大空だから出来るのではない、出来るからこそ、彼が大空なのだ。
仲間を思い、歯を食いしばる綱吉を見て、そう感じた。





「あら?」

ふと、隣を歩く綱吉を見て、気付く。
呟いた声はどうやら彼の耳に届いたらしく、彼は首を傾げつつ歩調を緩めた。

「どうかした?」
「………」

無言で彼の方へと一歩近付く。
思わず離れようとした綱吉の腕を掴み、それ以上の距離を拒んだ。

「やっぱり」
「な、何?」
「背、追い越されちゃったのね」

いつの間に、と言う私に、綱吉がきょとんとした表情を浮かべる。
少し前までは自分より下の目線だった。
この前までは、同じ目線。
そして今は…自分より、少し上の目線。
この間がひと月と言う事はないけれど、それでも決して長いと言うほどの時間ではなかったはずだ。
どうやら、少し遅めの成長期が彼を成長させたらしい。

「そう言えば…小さい?」
「小さいって言わないで。これでも女子では平均以上よ」

心外だと口を尖らせるふりをすれば、彼は慌てた様子で前言を撤回した。
言葉を選び、悩み…やがて、彼ははにかむように笑う。

「そっか。やっと…追い越せたんだ」

心底嬉しそうな声を聞いて、今度は私の方が首を傾げる番だ。
意味を問いかけても、彼は笑うだけで答えてはくれなかった。

「いいわね、男の子は。私ももう少し身長がほしいんだけど」
「いいよ、そのままで」
「小さい方がいいの?」
「小さい方がって言うか…そのままでいいよ。別に大きくてもいいけどね」

どんな姿でも好きだから。
普段は私からの甘い言葉に慌てる癖に、こう言うことだけはあっさり言えてしまう彼。
決して頻度は高くないけれど、だからこそ、彼の言葉はストレートに胸に届く。
甘い言葉には慣れているはずなのに…こういう、飾り気のない本心の方が、心臓に悪い。
思わず顔を逸らせば、綱吉が不思議そうに名前を呼んだ。

「…計算していないところがあなたらしいわね」
「計算?」
「ううん、何でもないの」

笑顔で誤魔化して、今尚成長を続ける彼の手を取った。
大人に近づき始めた手で、彼はこれから、何を守るのだろうか。
これからの未来を思い、小さく笑った。

沢田 綱吉 / 空色トパーズ

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10.11.29