031.それは、白い神殿で祈る人の姿に似ていた
白く積もる雪の中に跪き、願うように手を結び、祈るように瞼を伏せる。
その神聖な光景に気付き、勝鬨に沸いた兵たちの間に、自然と広がっていく静寂。
勝者と敗者を分けるものは、何を得たか、だ。
勝者と敗者、失ったものはどちらも同じ。
戦が終わり、両軍に多少なりとも被害が出る。
それはごく自然の摂理で、心を痛めることはあれど、受け入れられない者はいない。
ただ、彼女は違う。
平和な場所だった、と自らの故郷について語った彼女。
人を殺すことが罪だと教わり生きてきた彼女が、その生き方を変えるのにどれほどの覚悟を要したのか。
自らの道を見失うこともなく、彼女は前を向いている。
けれど、だからこそ―――彼女は、戦の終わりと共に、祈りを捧げるように瞼を伏せる。
勝利に沸くのではなく、失ったものを悼み、そして誓う。
「必ず…平和な世を作るから」
気が付けば、兵たちは皆、失ったものへ黙祷を捧げていた。
静まる戦場。
それは、彼女の小さなささやきが聞こえるほどだ。
「―――行くか」
彼女が瞼を開くのを見届け、政宗がそう声をかける。
雪の上についた膝をパンッと掃い、はい、と頷く彼女。
政宗は、彼女が背中に隠した手が拳を握っているのを知っている。
満足げな表情は、まるで勝ち戦を喜んでいるかのようだ。
しかし、その表情もまた、彼女の精一杯の強がりなのだと気付いていた。
「怪我はないか?」
「ええ、大丈夫です。政宗様は…」
振り向いた彼女は、政宗の肩に残る焼跡を見て眉を顰めた。
それに気付いた政宗が苦笑を浮かべて彼女の頭を撫でる。
「上着が焦げただけだ。怪我はない」
「…本当、ですね?」
「あの程度の奴にやられると思うか?」
侮るなよ、と口角を持ち上げる彼に、彼女は漸く安堵したようだ。
戦の痕跡を生々しく残すそこを一度振り向き、彼女は政宗と共に歩き出した。
伊達 政宗 / 廻れ、