030.貴方の綺麗な言葉が、私を少しずつ腐らせていく
大事な親友と、姉と。
また三人で笑って暮らせる日が来るのだと。
そんな未来を信じて疑わないリオウの言葉が、ぽたり、ぽたりと心の水面に闇を落としていく。
必ず、目指す未来に辿り着いてみせると突き進む姿を見ていると、あの戦争で失くしたものの大きさ、多さを痛感する気がした。
真っ直ぐなリオウを見て、切なげに目を細めるティルの表情が痛い。
紋章越しに伝わる彼の心が苦しい。
私にそれが伝わったことに気付き、彼は苦笑を浮かべてごめん、と呟いた。
「…最後まで、彼はあの目を失わずに突き進んでいけるかしら」
「…どうだろうね。進んでほしいと…そう願っているよ」
出会って、別れて、手に入れて、失って。
繰り返すうちに、当たり前に持っていたはずの感情を見失った。
戦争を終わらせたその瞬間も、両手を挙げて喜ぶことなんて、出来なかったのだ。
「彼もまた、これから多くの障害に阻まれる。でも…きっと、乗り越えられると思うよ」
「…そうね」
そうであって欲しいと言う願望かもしれないけれど、それに縋る以外に出来ることはない。
私たちはもう手遅れだけれど、せめて彼の願いは叶ってほしいと思う。
「頑張って」
自分が出来なかったことを人に託すなんておかしいかもしれないけれど、それでも。
バルコニーから空を見上げるリオウに、小さなエールを送った。
1主 / 水面にたゆたう波紋