020.君と君の好きな人が、いつまでも幸せでありますように

船の上から澄んだ青空を見上げる。
慣れてしまえば心地良さすら感じる船の揺れに身を任せ、浮かぶ雲を数えてみた。
三つ目を数えたところで、空を飛ぶ鳥を見つける。
彼女は何も言わずに身体を起こし、片腕に布を巻いた。
慣れた様子でその腕を空へと差し出せば、先ほどの鳥が迷いなくその腕に向かっておりてくる。
黒い鳥―――闇雲が、腕へと降り立ち、それを結わえた足を差し出した。

「ありがとう」

そう言って頭を撫でようとするも、闇雲はスッと身体を浮かせて滑空し、船の縁へと降りる。
どうやらそこで返事が出来上がるのを待つらしい。

「もう。あんたはいつまで経っても馴れてくれないのね」

彼女が何度か撫でているところを見ているから、それが嫌いと言うわけではないのは知っている。
けれど、彼女以外の人間が撫でようとすると、酷い時には威嚇してくるのだ。
逃げる程度はまだ馴れている方と言えるだろう。

「姐さん、どうかしましたか?」
「んーん、何でも。あぁ、闇雲が来たから、水と餌を用意してくれる?」
「了解っす!」

ちらりと闇雲を見てから、彼が船の中に消えた。
それを見届けることなく手紙の封を解き、文面に視線を落とす。

「へぇ…二人目」

二人目が出来たと言う報告から始まる手紙には、彼女の幸せな様子が綴られていた。
こちらの胸まであたたかくなるような、そんな手紙だ。

「元親ー!!」

途中まで読んだ彼女が顔を上げ、元親を呼ぶ。
船の後ろの方から「何だー!?」と言う声が返ってきた。
手紙を携え、声の方へと向かう。

「元親、奥州に行きたい!」
「そりゃ構わねぇが…今度は何だ?」
「二人目だって!お祝いしなきゃ!!」
「へぇ、そいつはめでてぇな。カジキマグロでも釣って持ってくか!」

でけぇのを釣り上げるぞ!!と意気込む彼に、頑張れ、とエールを送る。
そんな彼の隣に座って、手紙の続きを読みだした。

「他にも何か書いてあるのか?」
「うん。幸せが詰まった手紙。書いている表情が目に浮かぶわ」

乱世が終わって、国が落ち着いて。
もちろん、全てが円満に解決したわけではないけれど―――それでも。
彼女は漸く、ゆっくりと腰を落ち着けているようだ。
手紙が書かれた少し前には、二人で一日かけてのんびりと遠乗りしたらしい。

「幸せ、だね」

沢山悲しんだし、沢山泣いた。
だからこそ、幸せになってほしい。

この先、彼女たちが幸せでありますようにと、少しだけ信じている神に祈った。

親友 / 廻れ、

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10.11.11