019.この空の下の何処かで、君は笑っていてくれているのだろうか

テレビを見ていてふと、あの頃の感情を思い出した。
青春を『甘酸っぱい』と表現する人がいる。
あの頃は何を馬鹿なことを、と思っていたけれど、こうして振り返るほどに時が経てば、その表現にもどこか納得できてしまった。
思い出と共によみがえったのは、まさに『甘酸っぱい』感情だったから。

―――おめでとうございます。最近、大活躍ですね!

インタビューアーの女性がマイクを向ける。
数人目のインタビューと言うもあり、間の取り方も丁度良い。

―――ありがとうございます。
―――試合に勝った喜びを誰に伝えたいですか?
―――何か、それ…いつも聞かれてる気がするね。

カメラを向けられた彼が、小さく苦笑する。
無理もない。
メディアは“そう言う話”が大好きなのだ。
いや、“そう言う話”が大好きな視聴者がいるから、メディアもまた、そう言う話題を好むのだろう。

―――今回は伝えなくていいよ。この会場でちゃんと見届けたはずだから。
―――あら、今回はご一緒だったんですね!お二人の仲は順調ですか?
―――いつも聞くだけ無駄だよ。不調だって返事は一生聞けないから。

試合の汗で頬や首筋を濡らしながら、不敵に笑う姿にどれほどの女性が溜め息を吐くだろうか。
尤も、その口から語られる内容は、今までの彼のインタビューを知る人間からすれば惚気以外の何物でもない。

―――では、何か一言お願いします!
―――人ごみに気を付けて下に降りてきなよ。それから…これは応援してくれる人に向けて。いつもありがとう。
―――ありがとうございました!

颯爽と去っていく姿は、男の目から見ても格好良い。
高校時代は小柄で女性のような線の細さすら感じていたけれど、今となっては冗談でも言えそうにない。
他の選手に比べれば、まだ細い方だけれど。

「…そっか。元気にやってんだな、アイツら」

同窓生の中でも、こんな風にテレビ越しに近況を知ることが出来るのは彼らくらいだ。
いや、テレビに映るのは専ら彼の方で、彼女は殆どメディアに姿を見せないけれど―――こんな風にメディアが彼女の話題を振ってくれるおかげで、ついでに彼女の状況まで知ることが出来ている。

ピリピリ、と電話が鳴った。

「おー、俺。あぁ、ちょうど今見てたぜー。………んなわけねーって。もう10年も前の話だぜ?流石に吹っ切れてるよ。でもまぁ…元気みたいだし、仲も良いみたいだし…それでいいんじゃね?」

今尚、高校時代からの友人との電話越しの会話を続けながら、テレビに目を向ける。
懐かしい気分に浸らせてくれたことに、小さく感謝した。

??? / 夢追いのガーネット

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10.11.10