016.私の心は澱んでいる、まるで流れる事を忘れた川のように

「…………………」

黙々とマネージャー業に勤しむ彼女。
そんな彼女を遠巻きに見守る選抜メンバー複数。
表情は無表情で、物に当たっていないのが奇跡のような光景だ。
彼女が生み出す低気圧に耐えかねた何人かが、状況を打開できるかもしれない人物の元へと走る。

「椎名ー!!あいつどうしたんだよ!?」
「どうしたって、何が?」
「めちゃくちゃ無表情!!暗雲が見えそうなんだけど!!」
「あぁ…無表情なだけで仕事はしてるし、問題ないんじゃない?」
「無表情すぎて怖ェよ!!」

必死の訴えもどこ吹く風。
翼はちらりと彼女に視線を向け、再び柔軟に戻る。
慣れていないのか、気にしていないのか、原因が彼なのか。
何が何だかよくわからないけれど、とにかく彼女が何かに不機嫌だと言うことと、翼が全く気にしていないと言うことだけは明らかだった。

「1シーズンに一回くらいあるんだよね。ああやって思い切り沈み込む時期が。理由は…日常のストレスが積もり積もっていたり、何もなかったり…色々」

なぁ?と確認するように元飛葉中メンバーに問いかける。
うんうん、と頷く彼らもまた、彼女の様子に戸惑いはないようだ。

「大丈夫。あの状態でも仕事は普通にこなすし、会話もまぁそれなりに。強いて言うなら―――」
「言うなら!?」
「ちょっと沸点が低くなるだけ」

十分問題だ。
慣れていないメンバー全員の心の声が一致する。

「準備運動終わった?」
「!?」

翼の言葉にシンとし、彼女を振り向こうとした矢先の声。
盛大に肩を震わせた彼らは、一斉に声の主を振り向いた。

「…翼、何なの?」
「気にしなくていいんじゃない?」

自分が原因だと気付いているのかいないのか。
普段からは考えられない無表情で、彼女は首を傾げた。」

椎名 翼 / 夢追いのガーネット

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10.10.22