015.あなたの冷たく鋭い言葉に、わたしは躊躇する
何も知らない、と繰り返す捕虜。
その声は恐怖に震えていたけれど、目は諦めていなかった。
それを見て、私ですら悟る。
この男は…嘘をついている。
何も知らないなら、洗い浚いすべてを吐いてしまえばいい。
何も知らないと繰り返すだけで何も話そうとしない輩は、大抵は何かを知っているものだ。
「私には家族がいるんだ…!頼む…帰してくれ!!」
その、悲鳴にも似た言葉に、偽りはない。
家族の命を握られ、何も話すなと言われているのだろう。
それを思えば、これ以上聞き出そうとするのは残酷に思えた。
けれど―――これは、戦だ。
時として、残酷な決断もしなければならない。
「―――…吐かせろ」
「…御意」
政宗様は視線を逃がすことも、背を向けることもなく。
ただ静かに、氷景にそう命じた。
その声は無感情に冷たく、思わず声を上げる。
「政宗様―――」
しかし、名前に続く言葉が見つからなかった。
私に何を言えると言うのだろうか。
彼が、この決断に心を痛めないはずはないのだ。
その証拠に、振り向いた彼の目は、将としてのそれの中に哀しみを浮かべている。
「…申し訳ありません」
何も言えない。
言えるはずがない。
この人の背負うものの重さを知っている。
情報ひとつで、たくさんの命が救えると知っている。
遣る瀬無い感情を飲み込んで俯くと、ポンと頭に手を載せられた。
顔をあげれば、政宗様がそこにいた。
「…まだやることが山ほど残ってる」
そう言って、政宗様が自身の刀を抜く。
彼の言うとおり、この戦はまだ鬨が上がっていない。
立ち止まるわけにはいかないのだと、自覚すれば、自然と涙が引っ込んだ。
「はい」
強くうなずく言葉に、彼が小さく笑みを浮かべる。
「行くぞ」
戦場に向かう彼の背に続き、一歩を踏み出した。
伊達 政宗 / 廻れ、