014.嵐の中に私は解き放たれ、ただその場に立ち竦む
「やめとけ!」
自分の事のように喜んでくれると思ったエースからの、まさかの反対。
どうして?と言う問いかけすら、彼を苛立たせたようだ。
「よーく考えてみろよ。赤髪のシャンクスだぞ!?四皇の一人!!お前とは次元が違う!第一、一体相手といくつ歳が離れてるんだよ。お前なんかアイツからしたらガキだろうが!苦労するのが目に見えてる!!そんな相手に妹同然のお前を任せられると思うか!?いくらルフィの恩人だろうが、ここは頷けねぇ!」
この間、一息だ。
激流のように最初から最後までを言い切ったエースは、そこで大きく深呼吸をした。
口を挟む隙すらない。
彼女はただ、立ち尽くす。
「悪いことは言わねぇ、やめとけ。お前の手に負えるような相手じゃない」
肩を掴まれ、まるで諭すようにそう言うエースに、漸く彼女の意思が戻ってきた。
自分のことを思っての言葉だと言う事は、彼女自身もよくわかっている。
わかっているけれど。
「…無理、よ」
今更、だ。
動き出した感情を止めることなどできない。
「そうやって背伸びしてるのも、お前らしくない。昔はもっとガキっぽかった」
「色々あったの。昔みたいに呑気に生きてられないわ」
「…そりゃ、そうだろうけど…そう言う問題じゃねぇんだよ」
わかってくれよ、と溜め息を吐くエース。
兄として慕う彼の言葉を聞き入れたいと言う思いもある。
けれど、それ以上の想いがあるから、頷くことなどできはしないのだ。
「シャンクスは四皇だけど、二回り近く歳が離れてるけど…でも、それでも…好きだから」
彼女はそう、笑った。
「……………そう、だよな。お前ってそう言う奴だもんな…一度決めたら梃子でも動かねぇ…ルフィと同じだ」
エースはガシガシと髪を掻いた。
本当は、何が何でも止めたい。
今すぐに船を下りさせて、どこか平和な町で暮らしてほしい。
ルフィとは違う意味で大事だからこそ、こんな危険な世界に身を置いてほしくない。
「…わかった。ちょっとアイツと話してくる」
「私も―――」
「お前はここにいろ。もしついてきたら絶対認めないぞ。無理やりにでも連れて行って、適当な島で下す」
「な…っ!横暴!!」
「いいな?」
「―――――わかったわよ」
有無を言わさぬ声色に、渋々頷く彼女。
よし、とそれを見届けて歩き出すエース。
彼女はその背中にじっと視線を向け続けた。
「随分荒れてたな」
「ベック」
「ま、あいつの言い分はわかってるんだろ?」
「………あんなの、もう何度もシャンクス自身に言われてることだわ」
―――俺は有名すぎるからなぁ。
―――こんなオヤジを相手にするなって!
シャンクスは彼女の想いは否定しなかったけれど、受け入れたこともない。
エースに言われなくても、十分すぎるほど理解していることだ。
「あれだけ心配してくれる人間がいるのは幸せなことだぞ」
「…うん。少し…可愛げがなかった、よね」
「あとで謝っとけ。お互い様だからな、それで十分だろ」
ベックマンに頭を撫でられ、僅かに目を細める。
戻ってきたら、ちゃんと謝って…心配してくれたことにお礼を言おう。
今はこの場にいないエースを思い浮かべ、そう決めた。
シャンクス&エース / Black Cat