012.君が笑っていてくれるのなら、僕はどんなことでもしよう
―――今はまだ、私が守ってあげる。でも、いつか…格好良く成長したその時には、私のことを守ってね。
頭を撫でる優しい手。
自分だけに向けられる、あたたかい笑顔を見上げて、強くなろうと誓った。
「さっき彼女を見たよ」
去り際に、思い出したようにそれを告げる雲雀。
彼女は雲雀を入れ替わるように日本に向かっていたのだが、そう言えばそろそろ帰る頃だ。
もうすぐ彼女に会えるのだと思えば、自然と気分も良くなってくる。
「駅前でね。男三人に声を掛けられていたみたいだったよ」
「そっちを先に言ってもらえませんか!?って言うか、そんな状態の彼女を放置!?」
「君が急がせるから悪いんだよ」
確かに、報告を急いでほしいと言った。
言ったけれど…!ほんの数時間前の自分に文句を積み上げるツナを横目に、雲雀は「じゃあね」と冷静すぎる様子で部屋を去った。
バタン、と扉の閉じる音で、ハッと我に返るツナ。
「こんなことしてる場合じゃない!」
勢いよく立ちあがった所為でデスクの上のインク壺がぐらりと揺れたけれど、その行く末を見届けることなく部屋を飛び出した。
「こんにちは、ツナ」
助かったわ、とにこにこと笑顔を浮かべる彼女。
ツナがそこに到着した時、彼女はまだそこにいた。
ついでに言うならば、雲雀に教えてもらったそのままの状況もまた、続いていた。
「まったく…頼むから一人で出歩かないで」
「でも、毎回人に頼むのは悪いし、何より息が詰まってしまうわ」
「俺でも駄目?」
「………駄目、じゃないけど。ツナは忙しいから、やっぱり駄目」
悪びれた様子もなく、彼女は笑う。
そして、あ、と思いついたように声を上げた。
「ありがとうね、ツナ。昔は男の子たちに囲まれて泣いていたのに…頼りになるわ」
「俺って言うか、ボンゴレの威を借りてる感じだけどね」
「そのボンゴレを率いているのはあなたなんだから、胸を張りなさいな」
彼女は気にしなくていいのよ、と言った。
そして、悪戯に隣に立つツナの腕に自信のそれを絡めてみる。
反応を楽しんでいるのだとわかっているのに、思うままに反応してしまう自分が恨めしい。
「ねぇ、外に出たついでにランチに行かない?それとも忙しい?」
「…いや、付き合うよ。放っておくとまたナンパされそうだし」
「そんなに頻度は多くないのよ?」
「週1の頻度は多くないの?」
溜め息と共に問いかけると、さぁ、と楽しげに首を傾げる彼女。
危機感がないわけではないから、たぶんわざとなのだろう。
そうとわかっているのに、いつも駆けつけてしまうのは彼女が大切だからだ。
「美味しそうなお店を見つけたの。行きましょう」
「…うん、楽しみだね」
わざとだって何だって構わない。
彼女が隣で笑ってくれているならきっと、何だってできてしまうだろうから。
沢田 綱吉 / 空色トパーズ