100.永遠
今より先の未来なんて、保障されているものじゃないと思っていた。
傍にいるのが当たり前だったとしても、いずれは違う道を歩いていくんだって悲しんだこともあるし、実際に離れていた時期もある。
私たちの関係は、いつまで続くのかな、続けばいいな―――あの時はまるで、他人事のようだった。
その“続けばいい”が、いつの間にか“続けたい”に変わっていた。
傍にいてほしい、傍にいたい。
想うだけじゃなくて想われたい。
際限なく湧き上がる欲に自覚した時、思わず苦笑した。
「翼」
すぐ傍らで作業をしていた彼を呼ぶ。
手を止めて振り向いた彼は、私の言葉を待っていた。
「永遠を誓うことは出来ないけど、愛してる」
分厚い本が、翼の手から離れてゴトンと床に落ちる。
目を見開いた彼はきっかり3秒間動きを止めていた。
そして、思い出したように…と言うよりは何事もなかったかのように落としたそれを拾い、作業を再開。
「…今更、だと思うけど」
「うん。ちょっと、いろいろ考えてたら、どうしても言いたくなって」
これからなんてどうなるかわからない。
だから、永遠なんて誓えないけれど、それでも。
誰よりも想っているこの気持ちだけは、どうしても伝えたいと思った。
「永遠は誓えない、か。らしいね」
「そう?」
「うん。そう言う現実主義なとこ、昔から変わらない。少しは夢見てみようって思わない?」
翼の言葉に驚いた。
もしかして、彼は永遠を信じる口だったのだろうか。
絶対に違うと思っていたから、言葉が途切れてしまった。
「言っておくけど、信じてないよ」
「あ、そうなの?」
「当然。そんな不確定なものを信じるような性格じゃないってわかってるでしょ」
「うん、それはわかってるんだけど…じゃあ、夢見るって?」
「女ってそう言うの好きでしょ」
「…人それぞれ、だよね。私の場合は、十分夢見てると思うし」
「そう?」
「ん。だって、翼が夢を追いかけてばっかりだから」
気が付けば、彼と同じことを夢見てる。
いつか、彼が選手として世界の舞台で活躍すること―――それは、翼の夢であり、私の夢でもあった。
そう言って笑えば、彼はそう言う事じゃないけど、と小さく笑みを浮かべる。
「ま、夢を共有できるのはいい事だよね」
「うん。だから頑張ってね」
「当然」
ん、と差し出された拳に、こつり、と自分のそれを合わせる。
そして、二人して子供のように笑った。
【 100.永遠 】 椎名 翼 / 夢追いのガーネット