099.別離

時々、かつての夢を見る。
霊界の檻に囚われ、無為に過ごす時間。
徐々に力を失い、止むを得ないと決心したあの時。
たとえ、何年、何十年かかることになろうとも、必ず蔵馬を見つけると誓った。

「どうした?」

拠点を人間界から魔界に戻し、どれほどの時間が流れただろうか。
既に、人間の知人は当の昔にこの世を去った。
霊界に行けば再会を果たすことも出来ようが、それをするつもりはない。
彼らは人としての天寿を全うし、そして自分は生きているのだから。

さらり、と長い銀髪が揺れる。
昔と同じ姿だが、やはり違う。

「あなたは優しくなったわ」
「…どういう経緯でその感想に至ったのかは疑問が残るけど…俺としては、君の方が優しくなったと思う」
「そう?」
「昔は俺と同じくらいに…いや、俺たちに関することなら、俺以上に冷酷だった」
「……………そうだった、かもしれないわね」

思い出そうにも数百年も前の事だ。
鮮明に思い出すにも無理があり、曖昧な返事で答える。

「コエンマから聞いたよ。エンマ大王を殺さんばかりだったって」
「………あなたと引き離した奴が悪い」
「あぁ、そうだろうな。俺が君の立場でも同じ状況だっただろうが…俺にはエンマ大王にとって、君ほどの価値はないな」

彼女は絳華石を持っているからこそ、生かされていた。
それが存在しないのであれば、交渉の余地はなかったのだろう。
蔵馬が初めに囚われ、そして彼女が後だったことは、ある意味正しい順番だったのかもしれない。

「今でも、時々夢に見るわ。もう殆ど覚えていないのに」
「…」
「でも、不思議な物よね。夢の中では、離れても必ず会えるとわかっているから…あまり、焦燥感はないの」

彼が傍にいる今と言う未来を知っているからこそ。
夢を見た朝も、心穏やかに目覚めることが出来る。
浮かぶ感情は懐かしさだった。

「ねぇ、蔵馬。外を歩かない?」
「俺は構わないが…躯から仕事を任されていたんじゃないのか?」
「いいの。たまには思い切り羽を伸ばすわ。いつも尽くしているんだから、彼女だってそれくらいは許してくれるわよ」
「…なら、丘の方に行こう。今の季節は蕾が美しい」
「そう言えば…。ゆっくり外の風景を眺めている暇もなかったわ」

【 099.別離 】  妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い

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10.09.14