098.地図

「ねぇ、クラウド。次はどこに行くの?」
「さぁな…どこに行きたい?」
「わぉ、クラウドの口からそんな言葉が聞けるなんて。天変地異の前触れかな?」
「お前の勘は割とあてになるからな。お前の思う場所に行けば仕事がある」
「あ、仕事ね、仕事…」
「他に何があると思ったんだ?」

片足をついたままバイクのメーターなどを調整するクラウドの背中に凭れて、後ろに座る。
よいしょ、と開いた地図はボロボロだ。
それは、あの戦いの時から使い続けている地図だったから、無理もない。

「そろそろ使えなくなりそうだね」
「じゃあ、次の町で買おう。ケータイで使える奴が良いな」
「んー…紙、ってところが気に入ってたんだけど。それに―――」

思い出もあるし、と彼女が呟く。
その脳裏に過る記憶の中身は、長い時間を過ごしてきたクラウドには手に取るようにわかった。

「なおさら、もう必要のないものだ」
「…うん。そうだね」
「いつまでも過去に囚われるべきじゃない。俺たちは…前に進んでいるんだ」

その言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているかのような内容だった。
彼女はその事について言及はせず、そうだね、と繰り返す。
彼の心を癒すのは、時間か、それとも人か。
もし後者ならば、それは自分であってほしいと思う。
少なくとも、共に旅立つことを許されたから。
背中を預け、預かることは許されたはずなのに、もっと、と心が渇望する。
次は背中じゃなくて、彼の隣がほしいと。
欲深くもそう思う自分自身を止める事に必死だった。

「ね、次は海沿いの町に行こう」
「そこがいいのか?」
「うん。今の季節は海水浴客が多いよ。きっと、仕事も見つかるって」
「…そうだな。暑いのは好きじゃないんだが…」
「たまには日光浴も大事だって。ヴィンセントみたいに病的に白くなる前に」

にこやかに答えた彼女の言葉に、二人は思わず口を噤む。

「………あれは俺には無理だろ」
「………ですね」

あんな白いクラウドは嫌だ。
そう言って苦笑する彼女。
そんな彼女に小さく口角を持ち上げてから、クラウドはバイクのエンジンをふかす。

「目的地が決まったなら、出発するぞ」
「はーい」

ひょいと彼女がクラウドの背を下りた。
エンジンの調子を整えてから、脇に立ったままの彼女を振り向く。
手を差し出せば、彼女は笑顔でその手を取った。
そして、先ほどとは逆の向きで、クラウドの後ろに跨る。
腰に回る彼女の腕の位置と強さを確認し、彼はゴーグルをかけた。

「どっちだ?」
「南に真っ直ぐ!」

そして、バイクが走り出した。

【 098.地図 】  クラウド・ストライフ

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10.10.13