090.相棒
「―――ところで、舞姫さんってすごく謎の多い女性ですよね。ご自身の出生は一切お話しされませんし」
女性リポーターがマイクを片手にそう語る。
そうかな?と小首を傾げれば、斜め45度からカメラのフラッシュ。
インタビューの終了まではあと5分残っている。
「出生に関してはNGですよ」
「わかっています。それがインタビュー条件ですから、仕方ないですよね。すごーく気になりますけど」
リポーターがにこりと作る笑顔は、カメラ慣れした笑顔だ。
ファンからも要望が多いんですよ、と言う言葉に苦笑した。
「では、そろそろ最後の質問になりそうですね。えーっと…じゃあ、これで!
質問の内容は…藤村選手との付き合いは何年くらいですか?うーん、中々面白い答えが聞けそうな質問ですね」
リポーターが、箱から引いた紙に書かれた質問を読み上げる。
「何年…かな。割と長いと思うよ。5年…いや、もっとかな。でも、一時期向こうに行っていたから、それを考えると大体5年くらい」
「それはパートナーとしての期間ですか?」
「核心に迫ろうって?……ま、いっか。伴侶と考え出したのは半年くらい。差し引いた時間は―――相棒として、かな」
「相棒ですか?」
「そ。ほんとに、半身みたいにぴったりな相棒。相手が何を考えてるのかわかるし、自分の考えも伝わる―――言葉にしなくても、ね」
「以心伝心ですね」
「そうだね。フィールドでも、私生活でも…あいつといると、楽しめたよ」
言葉が終わった絶妙なタイミングで、ピピピッとアラーム音が鳴り響く。
これから、と言う時に鳴ってしまったアラームに、リポーターが残念そうに肩を落とした。
「すみません!最後に、藤村選手に一言お願いします!」
ずいっと差し出されたマイクに思わず仰け反る。
時間オーバーは良くないんだけどな、と思いつつ、じゃあ一言だけ、と頷く。
「今までもこれからも…背中を任せられるのはお前だけだと思う。―――なんてね」
彼はきっとこの手の雑誌は読まないだろうから、言えるセリフだ。
自然と浮かんだ笑みがシャッター音と共にカメラに残され、1時間に亘るインタビューは無事終了。
この後どうですか、とのリポーターの誘いを丁重に断り、ホテルを後にした。
「あれ、成樹?」
「おー、お疲れさん」
「迎えに来てくれたんだ」
「出かける用事のついでや。それより、夕飯食ってかん?」
「あ、じゃあ―――」
「駅前のラーメン屋か?」
「おー。流石」
「最近のブームやん」
「うん。あの後味の良さが病みつき」
「さよか。ところで、今日はどこの雑誌やったん?」
「あーっと、どこだっけ」
「あのなぁ、自分の事やろ」
「まぁまぁ、気にするな!大したことは喋ってないからさ」
【 090.相棒 】 藤村 成樹 / Soccer Life