086.共鳴
とても不思議な感覚だった。
共闘した数は、おそらく片手の指で足りる。
それなのに、彼が…蔵馬がどう動くのか、手に取るように感じた。
いや、手に取るようにと言う言葉もまだ足りない。
彼の動きを感じ取ることは、呼吸に等しかった。
「お前は面白いな」
興味深い、と彼が笑った。
頬に跳ねた赤を拭いながら、妖艶に。
「ここまで共鳴できる相手は初めてだ」
伸びた手が私の頬をなぞる。
私の頬には、彼の指先に絡んだ赤が筋を作っているはずだ。
「相手に合わせるのは容易い。だが、俺の感覚についてきた妖怪はお前以外にはいない」
「…私も…同じ感覚を抱いた、と言ったら?」
問いかけた言葉のどこに、彼を喜ばせる要因があったのか。
楽しげに笑みを深めた蔵馬の親指が私の唇を撫でた。
「どこまで行けるか―――楽しみだな」
その声を聞いて、本能がざわりと反応するのを感じた。
目指そうと考えたことすらない高みを望む自分がいることを、初めて悟る。
彼の昂揚にすら、共鳴しているらしい。
「来るだろう?」
「…今までとは違ったものが見えそうだな」
「あぁ、もちろん」
退屈はさせない。
クールだと思っていた蔵馬にも、燃えるような熱い感情があったらしい。
その事実に小さく笑み、差し出された手を取った。
【 086.共鳴 】 妖狐蔵馬 / 悠久に馳せる想い