072.胎動
「ねぇ、セナ」
「な、何」
「…どうしてそんなにビクビクするの、失礼ね」
「さっきまで散々な質問をされたから!」
「幼馴染なんだから、慣れてるでしょ」
「そう言う問題じゃないよ!?」
「ところで、質問していい?あのさ」
「(許可を求めてるのに求めてないよね…慣れてるけど)」
「“胎動”って知ってる?」
「たいどう…太洞?」
「あ、なんか違う漢字変換をした気がする」
「…」
「胎動って言うのは…こう書く」
「あぁ…うん。言葉だけは」
「今のセナって、こんな感じよね」
「……………??」
「そんな微妙な顔をしないでよ。悪い意味じゃないわ」
「あ、そうなの?」
「赤ん坊に退化してるって意味だと思った?流石にそれはないでしょ」
「(…否定できない)」
「(…否定しないし)」
「…」
「とにかく。セナは今、新しい世界に向かって飛び出そうとしてる。セナにとってはきっと、誕生にも等しい事なんだろうなって…ふと、そう思ったの」
「…そう、だね。そうかもしれない」
「セナはきっと生まれ変わる。この学校に来てよかったね」
「…うん」
「急がなくていいから…ちゃんと生まれてきてね」
待ってる、と言う言葉が優しかった。
【 072.胎動 】 小早川 瀬那