069.咎人
「神羅なんか大嫌いだ!!」
悲鳴にも似た叫び。
助けようと差し出した手が、空を掻いた。
一秒が何十秒にも思えるような時間の感覚の中、がらり、とそれが崩れる。
彼女を嫌い、睨みつける目は最期の瞬間までその色を失いはしなかった。
嘆くように風が鳴いている。
「…大嫌い、か」
掴めなかった手を思い出す。
まだ、子供だった。
生き長らえる事よりも、自らの心に従う事を選んだ、哀しい子供。
あの子が何を失い、神羅を憎んでいるのかは知らない。
知っているのは、自分が、その憎まれる神羅の一員であると言う事実だけ。
先達たちが刻んだ咎が、重石のように肩に圧し掛かる。
「向こうは片付いたが…あの子供はどうした?」
ざり、と地面を踏んで近付いてきたセフィロスは、彼女の周囲を見回してからそう問いかけた。
彼女はその問いかけに言葉を返さず、沈黙のまま首を振る。
その反応だけで何かを察したのか、彼はそれ以上深く追求しなかった。
「帰るぞ」
それ以上の言葉はなく、差し出された手。
自身のそれを重ねようとした彼女は、ふと現実に重なったデジャヴに思わずその手を引いた。
今と同じように伸ばした手が拒まれて、そして。
同じではないのに、同じだと感じてしまう。
ぎゅっと拳を握り締めた彼女は、悔しいと呟いた。
「逃げるな」
セフィロスの手が、彼女の手を包んだ。
強く握り締める指を解き、自身の指で絡め取る。
「恐れるな。犠牲なくして変化は得られない」
「…そう、ね」
「何かを失ったなら、次は失わなければいい」
だから…今だけは泣いていい。
そう言って、彼は顔を隠すように彼女を引き寄せる。
きっと、この感情は彼には理解し難いもの。
それでも、理解しようと努め、手を差し伸べてくれる。
さりげない優しさが心地良く、立ち上がると確信するその信頼は揺ぎ無いもの。
「…ありがとう」
また一つ、二人の負う咎が増えた。
その事実に悲しみながらも、前へと進む―――己が望む未来へと繋げるために。
【 069.咎人 】 セフィロス / Azure memory