058.時間

「いや、うん。ここまでの成長は、まぁわからなくはないのよ」
「う、うん」
「それにしても…時間って何、時間って」
「そ、そんな事僕に言われても…」
「そうよね。セナに言っても仕方ないけど…言い出したのが誰かわからないんだから、セナに言うしかないじゃない」
「まぁ、そう…なのかな?」
「応援してるチームを悪く言うつもりはないんだけどさぁ…ネーミングが凄いよね
ついでに言うと、普通を逸脱しているとは言え時間を要素に加えるあたりの強引さ?」
「(否定できない…!)」
「まぁでも、凄いと思うよ。“お隣の小早川くん”はいつの間にか日本の高校アメフト界のヒーローだもんね」
「ヒーローって…そんな事ないと思うけど」
「関東勢悲願の優勝を成し遂げておきながら何を謙虚な事を言ってるんだか」


「ところで、そんな馬鹿でかい旅行キャリーを用意して、今度はどこに?」
「どこって…え、知らないの?ヒル魔先輩から聞いてない?」
「パスポートを探しておけって言われただけよ」
「(情報少なっ!!)来週からアメリカに行くんだけど。…アメリカンフットボール・ユースで」
「………アメフトのワールドカップね。休む暇もなくご苦労様」
「…確か、ヒル魔先輩はあいつも来るからって言ってたけど…」
「………誰を?」
(指差す)
「…聞いてない。大体、私はアメフト部の一員じゃないんだけど。合宿の時も試合の時も練習の時も…何かと借り出されてるけど、私、陸上部だから。あの人その辺ちゃんとわかってるのかしら」
「たぶん、わかってて無視してる…かな?」
「でしょうね。私だって陸上部期待の1年生エースなのよ。アメフト部のマネに引き抜かれそうになった時に顧問があの人に食いついたって有名なんだから」
「え、何それ」
「そのまんま。大事なエースを引き抜かれちゃ困る!って言ったらしいわよ―――職員室の端っこから」
「(勇気があるのかないのか微妙!)」
「まぁ、はいはいって何でも言う事を聞かされてる校長や他の先生よりは勇者よね。口にするだけ」
「その先生って今も無事…?」
「あはは!そんな心配そうな声で聞かなくても!大丈夫大丈夫。条件付でマネの話は流れたから」
「ヒル魔先輩が引いた!?どんな条件を出したの!?」
「………ヒミツ」


「それにしても…明後日から来週よね」
「うん」
「あたし、今聞いたところだから全然用意してないんだけど」
「…急いだ方がいいと思うよ」
「女の準備には時間が必要なのよ!あの人、そこんとこわかって―――ないわね、きっと」
「何が何でも無理にやらせる人だから」
「そうね。ったく…セナの得意技で時間をどうにかしてくれない?」
「現実的に時間を戻せるわけじゃないよ!?って言うかアメフト関係ないし!!」

【 058.時間 】  小早川 瀬那

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10.06.16