055.魔物
「お前はモンスターに対して容赦ないな」
向かってきたモンスターを一刀両断した彼女に、セフィロスがそう言った。
彼女は振り向き、目を細める。
「せめて…これ以上苦しんで欲しくないと思うもの」
「これ以上…?何に苦しんでると言うんだ?」
「セフィロス…あなた、知らないの?」
疑問を抱いたセフィロスに、彼女は驚いたように目を瞬かせる。
そして、彼女の目が哀しげに揺れた。
「彼らは人間よ。宝条の手によって、モンスターになってしまった人間」
「モンスターが…人間?そんな馬鹿な…」
「そうね。愚か以外の何者でもないと思う。神羅はそれを必死に隠しているわ。私だって、データベースに侵入しなければわからなかった」
彼女がそれを知ったのは、レッドベルにいた頃の事だ。
事実を知った時には、言葉で言い表せない感情を抱いた。
燃えるような怒りと同時に、身を裂くような悲しみ。
自分はどれほどの人を斬ってしまったのか。
知らなかったでは済まされない現実が彼女の前に横たわっていた。
「理性など殆ど残っていない。けれど、彼らは苦しんでいる。だから…戻す手立てがないのならば、せめて苦しませず終わらせようと思った。向かってくる彼らに殺されるわけには行かないから」
せめて、なんて自分のエゴでしかない。
彼女は、死ぬわけには行かないから剣を抜いた。
モンスターを斬る事が、人間を一人殺す事だと理解しながらも、生きるために剣を握った。
「モンスターなんて言って区別するけれど…理解して尚彼らを斬る私の方が、よほど魔物のようだと思うわ」
「………止むを得ん。生きるためだ。奴らも、生きるために襲う。俺たちも生きるために殺す。そこに違いはない」
「…そうね。殺す事が解放だとは言いたくないけれど…死逝く彼らが安らかであればいいと思う」
既に塵も残さず消えたモンスターが存在していた場所を見つめ、彼女は瞼を伏せた。
そして、音もなく目を開き、腰の銃を抜く。
照準を定める動作もなく、トリガーを引いた。
銃弾が、セフィロスの背に迫っていたモンスターを貫く。
「安心して。迷い悩んだのはもう昔の事よ。今は、武器を取る事に迷いはない」
「そうか」
頷いた彼が彼女へと近付き、肩の上を通過するように刀を突き出す。
彼女の背後のモンスターの眉間に正宗が突き立てられた。
「…行くぞ」
「ええ」
頂点を極めた二人の足取りに迷いはない。
【 055.魔物 】 セフィロス / Azure memory