051.魔法
初めて魔法を目にしたのは、とても綺麗な女性が町にやってきた時。
朝日を背負って現れた彼女は、私と目線を合わせて地図を広げた。
隣町に行くのだと話してくれた彼女に、向かうべき場所を示す。
彼女はその道を見つめてから、笑顔でお礼を言った。
その時ふと、彼女が私の手の平の怪我に気付く。
数刻前に家の前で転んでしまって出来た怪我はまだ新しく、少し血が滲んでいる。
「怪我をしたのね」
そう言った彼女が、その白くて柔らかい手で私の手をそっと包み込む。
そして、小さく何かを唱えた。
すると、彼女の手に包まれている私の手が優しい光を帯びて―――
「わぁ…!」
思わず感嘆の声が零れた。
「魔法みたい…!!」
何も知らない子供な私に、彼女は笑顔で魔法使いなの、と言った。
あれから10年の時が流れ、今の私は魔法の存在を知っている。
あの時の魔法がケアルである事も知っているし、彼女が魔法使いではなくソルジャーだと言う事も。
そして、あの時の彼女は今―――
「様々な志を持って入社したあなた達に私が言いたい事は一つ。任務のために命を捨てるのは愚かな事よ」
壇上でそう語る彼女に、神羅の役員達がざわめく。
そんな役員を無視して、彼女は続けた。
「出来ない任務はレベルが足りなかったと諦めなさい。出来る任務をこなせば、いずれ実力が夢に追いつくわ」
「君は任務を何だと…!そんな途中で投げ出して、一体誰が」
「私たちがいる」
彼女は隣に並び立つ銀髪のソルジャーに微笑みかけ、そして下にいる人々に目を向けた。
「出来ないなら出来ないと言っていい。けれど、挑戦しようと思ったその向上心だけは忘れないで。いずれ、あなた達の力を借りるわ」
最後に挑戦的な笑みを浮かべ、彼女は壇上を下りた。
騒ぐ役員らの声を無視して、二人はホールを後にする。
この瞬間、誰もが二人に憧れた。
会社の方針通りに空気を戻そうとする進行役の声など聞こえない。
彼女自身が魔法のようだった。
【 051.魔法 】 セフィロス / Azure memory