049.天空

時代が違うのだと否応なくそう感じる瞬間。
それは、日常生活のいたるところに転がっている。

今、彼女は見上げる空の広さに、自分が生きた時代との明確な違いを感じていた。
周辺にこの城以上に高い建物はなく、そこから見る空を邪魔するものは何もない。
思い出すのは、都会ではなかったけれど、5階建て以上のビルも当たり前のように立ち並ぶ自分の町。
いつでも区切られた空ばかりを見ていた所為だろう。
こんな風に空が広いと感じたのは初めてだ。

「どうかしましたか?」

不意に、近付いてくる気配に気付き、声をかけられる前にそう問いかける。
驚いた様子もなく、いや、と用がある事を否定したのは政宗だ。

「随分熱心に見てるから何かと思ってな」
「空を見ているだけですよ」
「空?お前の国はもっと文明が進んでるんだろう?」

今更改まって見るようなものではない、と言う事だろう。
彼の言い分もよくわかる。
苦笑を浮かべた彼女は、そうではないのだと首を振った。

「文明が進んでいるからこそ…この時代では当たり前のものを見失っています。私たちの時代は、そう言う時代でした」

日常生活はこの時代よりも遥に便利だ。
しかし、失いつつある自然に気付き、それを取り戻そうと文明を駆使した結果、更にそれを失っていく。
そんな悪循環から、抜け出せる日は来るのだろうか。
この自然豊かな世界を見ていると、文明が栄える事に対する抵抗を覚えてしまう。

「ここは、良い時代だと思いますよ」
「…不満はないか?」
「そうですね…私の時代が豊か過ぎたので不便を感じる事はありますけれど、不満はありません。
私はここが好きですよ」

笑顔でそう答えた彼女の言葉に偽りはない。

彼女の生きた時代を想像する事は容易ではない。
知識にないものを、人からの説明だけで思い浮かべるのは難しいけれど、話を聞いているだけでわかる便利な世界。
その時代に生きておきながら、不満はないと言う彼女。
彼女らしいと思う反面、苦労をかけているのでは、と案じてしまう。
けれど―――彼女が笑うから。
ここが好きだと言って笑ってくれるから。

「…お前に会えてよかった」
「え?」

小さすぎた呟きは、彼女の耳には届かなかったようだ。
聞きなおす彼女に、政宗は答えずにそっとその頬を撫でた。

【 049.天空 】  伊達 政宗 / 廻れ、

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10.06.02