046.浮島
「…シャンクス」
甲板で日光浴を楽しむシャンクスからふと目を逸らし、あるものを見つけた。
思わず彼の中身のない袖を引き、注意を引く。
「んー?どうした?」
「あれ、空島?」
そう言って彼女が指差した方を見れば、海の上にぽかりと浮かぶ島。
思わず瞬きをする。
空島の存在を否定しているわけではないけれど、容易に目にするようなものではないのだ。
「空、島…か?」
どこか、違和感が拭えない。
目を凝らして見ても、違うともそうだとも断言は出来ない。
「…たぶん、違うんじゃないか?」
「どうしてわかるの?」
「あの位置に浮かんでたら墜落寸前だろ」
シャンクスの言葉に、なるほど、と頷く。
確かにあんな低い位置に空島が浮かんでいれば、それは墜落している状況と考えるべきだろう。
第一、空島は上空かなりの高さに存在すると聞く。
「じゃあ、あれ何なの?」
「そうだな…空っつーよりは浮島、だな」
「何のことだ?」
後ろから聞こえた声に、二人同時に振り向いた。
タバコを銜えて背後に立つベックマン。
彼女が腕を上げて例の島を指差す。
「空島かと思ったんだけど」
「…低すぎだろ」
「だろ?だから浮島だな!」
「まぁ、あながち間違ってはねぇな」
そう言った彼が、銜えていた真新しいタバコに火をつける。
「あれは浮島現象だ」
「浮島現象…?」
「蜃気楼の一種だ」
「へぇー…蜃気楼なんだ、あれ」
感心したように例の島に視線を向ける彼女。
ベックマンは、その隣で同じように感心しているシャンクスに呆れた様子で溜め息を吐き出す。
「あんたには前に説明したはずだがな」
「ん?そうだったか?」
「あぁ、確かに」
「はは!そりゃすまねぇな!」
悪びれた様子もなく、彼は屈託のない笑顔を見せる。
ゆっくりと航路を進む船、昼下がりの出来事だった。
【 046.浮島 】 シャンクス / Black Cat